TakahisaHarada

ペパーミント・キャンディーのTakahisaHaradaのレビュー・感想・評価

3.9
人生に絶望した男の20年を少しずつ遡りながら非直線的に見せる作品。恋、夢、家族、罪と罰とか色々な要素が入っていてまさに人生。
現在から過去に遡りながら回想していく形式は「メメント」と同じだなと思ったけど、こっちの方が先なのか。
スーツ、ペパーミントキャンディー、カメラ、お祈り、右足とか、時間を遡ることで「あの時の…」となるのが良かった。

3日前パートでのヨンホの「誰か1人道連れにしたいが選べない」という言葉から色々な人に裏切られた不幸な人生だったのかと思いきや、遡っていくうちにどちらかというと自分から大事な人との幸せを手放した人生だったというのが伝わってくる。まだ純朴だった軍隊の頃のパートに人生で一番深い闇があるというのはやるせない。
ヨンホに対する同情や共感というより、ヨンホを見ながら当たり前の幸せに感謝するような気持ちで観ていた。

ユン・スニムと最後の別れをする病室のシーンが一番印象に残る。あの時点では「そんなに泣く?」と思ってしまったけど、過去を見ていくうちに運命付けられたあのシーンの印象が強まっていくという体験ができる。終盤まで観ると、下衆な大人になってしまったヨンホが病室ではユン・スニムを前にしてかつての純朴な姿に戻っていたなと思える。
過去を遡っていく展開はヨンホの走馬灯的なものなのかなと思って観ていたので、ラストでヨンホが泣いたのは走馬灯の帰結で、もうこれ以上遡れない、死を受け入れ人生に別れを告げるしかない、という涙だったのかなと思った。