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ペパーミント・キャンディーのdojiのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

冒頭はただ混乱の只中にいる主人公への謎と疑問しかないけれど、時代を遡りながら主人公の来し方を辿る最中、とにかく男性としての彼の有害性に嫌悪感を抱く。けれどもさらに時代が遡るごとに、彼の中にある弱さをと、それを跳ね除けるように身につけた男性らしさの中で引き裂かれてしまったことに気がつく。そして決定的だった光州事件での誤射による少女の殺害。一瞬初恋の彼女の幻影を見せることで、彼の中のなにががその事件によってすべてを失われたことがわかる。あの闇の深さがおそろしい。

観客が冒頭のピクニックのシーンを懐かしむように、主人公も未来のじぶんを懐かしく思うラスト。それは映画の中での回想と、観客の回想が混ざり合う瞬間で、主人公があのシーンで「懐かしい」というのは、本来だったらありえない。それでも、涙を流しながら虚空を見つめるその目と、列車が迫り来る音が、彼の運命に映画として決着をつけてしまう。画面に映っている彼はあくまで1979年にいるものだから、映画がもたらすその残酷さに身震いがした。

従軍、公務員への就職、そして事業家としての起業など、彼は社会のシステムのなかで男性の言語を持つことで積極的に組み込まれようとしてしまい、結果的に最後は完全に破壊されてしまった。河辺の花を愛するような素朴で弱い男では、生きてはいけなかったということ。その現実を受け止めながら、男性たちによる社会を変えていかない限り、弱い男性の生きる場所などないのだろうと感じた。そしてそのためにフェミニズムはあるのだとも強く思った。
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