ずっと昔、ティーンエージャーの頃に感銘を受けたけれどその後お目にかかれない映画が数本ある。
この映画はその一本、ネットの時代はありがたいものでこの映画との再会をさせてくれた。
若いころ、感動した作品を見返してみると、あれっ?と思うことが度々ある。若さというフィルターが増幅しており、年を重ねてみるとそれ程でもないことは映画に限らずよくあることだ。
でも、この作品は違う!
若いころとは違う観点で見ても素晴らしい作品であった。
理由はたくさんあるが、監督が名匠ロバート・マリガン、製作、撮影、音楽に当時の一流職人を揃えていることがわかった。
しかし、何といっても最大の魅力は主演のサンディ・デニスに尽きる。
若いころ、サンディ・デニスが好みというと友人から変わってるねと言われたものだ。当時の映画雑誌にもグラビア等はあったが、地味な彼女はあまり人気がなかったかもしれない。
映画女優には、静止画ではそれほどでもないが、動き出すと様変わりして魅力的な女優が何人かいる。
彼女はその筆頭であり、彼女に半世紀ぶりに会えただけでも収穫であった。
若くして亡くなったのは本当に残念だ。
この作品は、いわゆる青春学園ものかもしれないが、マリガン監督は終始ドキュメンタリータッチで、当時のアメリカのハイスクールの抱える問題を冷静に炙り出す、その問題は今もあまり変わっていない、わが国でも同様かもしれない。
海に向かって『バカヤロー』(笑)のシーンも無ければ、先生を囲んで生徒達が合唱する場面もない。
当時はわからなかったが、この年になってわかったシーンに、ディケンズの『二都物語』をテーマにして教師がクラスに論争を巻き起こすシーンがある。これには大いに感動した。
ラストシーンも実にそっけない。
こんな青春映画を見ることができたことに改めて感謝を覚えて、下り階段を降りて、映画館(本当にミニシアター)を出た。