KnightsofOdessa

フランドルのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

フランドル(2005年製作の映画)
4.5
[人間のあらゆる暴力と罪を背負う少女の物語] 90点

大傑作。ここまで個々人の人間が登場しながら抽象的な概念を詳細に画面上に記録している映画も珍しいんじゃないかと思う。戦場であらゆる罪を体現するデメステルも、彼を含めた男たちの暴力を全て受け入れるバルブも、前者は暴力と罪の、後者は欲望と幻想の具現というように、一人の人間という要素は極めて薄いように思える。更には、戦場の砂漠とフランスの田舎を頻繁に往来するのとかも、連続性という言葉すら生ぬるい"土地"みたいな概念の同一性を感じる。そんな感じで、性行為によって自らを傷付け続け、人間の罪を全て背負ったバルブが、行為によってデメステルを救い、自らも救われるという帰結は実に希望的。この物語で希望的な帰結がないと死人が出るレベルで陰鬱。

作中のバルブ像は、デュモンが本来思い描いていたバルブ像とは異なり、演じるアデライド・ルルーが作り上げたものらしい。
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