ハル

めがねのハルのレビュー・感想・評価

めがね(2007年製作の映画)
3.8
開幕、もたいまさこの深々とした挨拶を見ただけで、その品行方正な佇まいと所作の美しさに目を奪われてしまった。

そこからの壮大な海とひっそり佇む美しいお店。
実に贅沢なロケーションで心が弾む。
店内のスペースの取り方や間取りも広々していて実に良い。
コロナ禍以降はなかなか海に行けないけれど、改めて見る白い砂浜は実に綺麗で、気持ちを清々しくさせてくれる。

しかしこの島には大きな問題が。
それは、観光スポットがない事!
あるのは「たそがれ」のみという。

ワンコがゴロッとしている描写などはまさにスローライフそのもので、時間の流れがゆったりゆっくり。
鈍化していく時間の流れが可視化されているようにそれぞれ、たそがれている。

そして、不思議と登場人物達のテンションの噛み合わないやり取りに安心を感じられた。
小林聡美、光石研、もたいまさこトリオに途中からは市川実日子も加わり、名バイブレイヤー揃い踏みといった豪華さで嬉しくなってしまう。
スポット的に登場する加瀬亮の存在感も輝く。

みんなでバーベキューをしながらたそがれについて語る場面はその穏やかさに思わずほっこり。
「たそがれ」が得意や「たそがれ」の天才など、ワードのチョイスが斜め上からとなっており、この作品のテイストにピッタリ。
流石の荻上監督節。

タエコがここを訪れた理由「携帯電話が通じない場所に行きたい」というフレーズは心の深いところで響いた。
滅茶苦茶共感できる部分。
デジタルデトックスの大切さだよね。時間に追われ、情報に追われる今だからこそ必要で尊い感覚。

生きていく過程で疲れた時にはこういう場所に身を委ね、何も考えずたそがれてみるのも一興かも。
「めがね」は気持ちに安らぎを与えてくれる一作。何とも言えない愛嬌タップリの『メルシー体操』も必見。
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