グイネス・パルトローにひたすら後光が刺し、冴えない男ジャック・ブラックがただ盲目に恋に落ちるくだらない映画と思っていたら、思っていたよりはいい映画でした。
ハル（ジャック・ブラック）は、女性は外見しか見ない浅薄な男。自分は太っていて背が低くてハンサムでもないので、友人からは「自分のリーグではない女を狙っているから彼女ができないんだよ」とか言われている。
ある日ハルはエレベーターで自己啓発コーチのトニー・ロビンズに出逢う。エレベーターの故障で数時間閉じ込められた2人は、恋愛の話になり、トニー・ロビンズはハルに「女性の内面が外見として見える」催眠術をかける。
トニー・ロビンズ！！私もこの人の自己啓発テープ、めっちゃハマりました。映画を観ればわかるけど、この人喋りが上手いので、その気にさせられるんですよね〜。
脚本の原案を書いた人は目が不自由な人で、トニー・ロビンズの自己啓発活動にインスパイアされてこの脚本を書いたんだって。だからトニー・ロビンズが出ているらしい。
喋り上手い、って書いたけど、セリフとしてはあんまり上手くなくて、しかも何度も出てきては「人を外見でしか判断しないというのは不幸になる」的な説教臭いことをしつこく言うので、「もしかしてこの人が出資して作った映画なのでは？」なんて中盤思ってた。
催眠術をかけられたことに気付いていないハルは、ブスな女の子を次々にナンパする。普段男から構われないブスな女の子たちは、ハルが美人だと褒めるので、すぐハルに魅かれる。ハルも、今まで美人には振り向いて貰えなかったので、自信が出てくる。
この設定が効いているようで効いてないというか、例えば会社の同僚とか、恋愛対象でない人たちは外見が違って見えない。なので女性だけなのかと思ったら、後で出てくるローズマリーの元カレとその友達の男も違って見える。ローズマリーのお母さんも変わって見える。
あと、足が不自由な障害者の人も出てくるんだけど、あの人の外見は変わって見えないの？
なので変わって見えない人は、「内面も外見も一緒」って見方もできるし、「障害は美しくないってことじゃない」って見方もできるけど、それを言うならブスだって肥満だって美しくないってことじゃないってなっちゃうし、テキトー。
ローズマリーは太ってるを通り越して巨漢、マツコ・デラックスみたいな感じなんだけど、ハルの目にはすっごいスタイルいいグイネス・パルトローに見える。
このグイネスが、「どーせニコニコしているだけの美人」役なのかと思ったら、とんでもない！すっごいスタイル良くてキレイなのに、自己肯定感が低い感じとか「肥満の女の子なんだ」って納得させる演技をしている！！
上手いじゃん！！
グイネス・パルトローってさ、最近『グープ』とか、「痛いハリウッド・セレブ」感が強くてキライだけど、よくよく考えてみたら『セブン』でブラピの奥さん演じた人なのよね。あの役も上手かったもんなあ。
しかし私はもはや、金髪白人美人はみんなアンバー・ハードに見える（笑）
ローズマリーがそんなに美しく見えるのは、小児病院の子供たちの世話をするボランティアをしたり、Peace Corp のボランティアをしたり、「内面が美しい」から。
なんだけど、ボランティアしているからっていい人とは限らないよな。グイネス・パルトローの演技で「ああ、ローズマリーって純粋な人なんだな」って納得させられるからいいんだけど、設定がまさに原題の “shallow”（浅薄）。
あと、「美人に性格のいいやつはいない」的なことを何度も言うのだが、それもおかしくない？
ハルは shallow（浅薄）だったから、催眠術をかけられなかったらローズマリーの内面を見ることができなかった。まず外見が美しいって釣っておいて、付き合ってみたらすごい頭いいし、面白いし、魅力的だと解った。で、恋に落ちた。だから、催眠術が解けて、本当の太った外見になってもやっぱり好きって思ったと。
まあ、そうか、それで筋は通ってるか。
なんかこの映画、「内面の美しさ」がテーマとか言われているけど、私個人的には「男の浅薄さ」を描いている感じがした。原題が Shallow Hal（浅薄なハル）じゃない？「美人に性格のいいやつはいない」って言うのも、ハルみたいな男は美人に袖にされるからそう言うのではないかと思うし、モテない女の子は男性に褒められるとすぐなびく、っていうのも、「浅薄な男」が考えそうな設定。
モテない女の子の中には、ハルみたいな軽い男を警戒したり軽蔑したりしている人も多いと思うよ。
最後はハッピーエンドで、意外にニッコリさせられるんだけど、それはグイネスが上手いからで、設定自体にはモヤモヤする映画でした。
