ディスコミュニケーションをテーマにした交わらない群像劇。
“自分に関係している事柄”というのは一体どこで線引きをするのか。
地下鉄でアンヌ(ジュリエット・ビノシュ)はアラブ系のチンピラに絡まれる。
全く関わってくれない周囲の人々。
チンピラがアンヌの顔に唾を吐いた次の瞬間、隣に座っていたアラブ系と思われる男性が「恥を知れ!」と叱りとばす。
この男性はどうして関わったのか。
人道的に?倫理的に?正義感で?
それとも同じアラブ系だから?
その答えが分かることは無いし、分からなくていいと思う。
とにかく、この男性は間違ったことはしていない。
この男性がチンピラに尾行され家族が危険な目にあったとしても、この行動が間違っていたと非難される世界であって欲しくない。
アンヌは「ありがとう」と声を絞り出し帰宅するも恐怖からか部屋の暗証番号を変えてしまう。
これにより同居するジョルジュは部屋に入れなくなって途方に暮れてしまう。
暗証番号を誰彼構わず教えてしまうのは危険極まりない。
だが、あれもこれも鍵をしてしまうのは寂しい世界だ。