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白い巨塔のmendeのレビュー・感想・評価

白い巨塔(1966年製作の映画)
3.7
テレビ版、どのバージョンも見たことがないし、小説も読んだことないけど、あまりに有名なので筋は知っているという『白い巨塔』、たぶんこれが初の映像化作品。これは田宮二郎のはまり役だろう。貧しい生まれで野心を隠そうともしない、倫理観が欠如した小賢しい男。能力はあるのに、その基盤が不安定なために、いつ転落するかわからないがけの上にぎりぎりで立っているような男。

患者としてはかかりたくない医者だが、たぶん作者の山崎豊子は愛情をもって描いている気がする。ちょっとバルザックのラスティニャックのよう。この主役はいけすかない美男じゃないといけない。

いつもどっちがどっちかわからなくなる東野英治郎と小沢栄太郎。いっしょに出ているとさすがに見分けがつく(当たり前…)。加藤嘉は声がしっかりしていて聞き応えあり。藤村志保と小川真由美はどちらも美人。
話が入り組んだ原作を、映画としてドラマチックにわかりやすく、まとめられている。

しかし、高潔でいてほしい教授や医師たちが、次期教授を決める選挙に金品接待会食なんでもありという狂乱ぶりが悲しい。そのグロテスクな様子が、生々しくリアルな手術シーンとよくあっている。財前の義理の父親(婦人科医)が「女たちからもぎとった金をつこうたる」と言って、義理の息子の教授選に金をつぎこむなど醜悪の極致だ。
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