雨丘もびり

ビッグ・フィッシュの雨丘もびりのレビュー・感想・評価

ビッグ・フィッシュ(2003年製作の映画)
4.8
「.....先生の話も良い」
   
【包容力をはぐくむ物語】
ウィルは、"ゆかいな経験談"を話してくれる父エドワードが大好きだった。
しかし次第に、周りの人を笑わせたくて"つくり話"を繰り返す父がわからなくなり、嫌悪感を強め、ケンカして距離を置いてしまう。
結婚し出産を控える立場となった折り、エドワードの末期癌をしらされたウィルは、"ほんとうの父さん"を理解しようと、勇気を振り絞って父の過去に向き合う。
   
(親心はわかるが正直ありがたくない)とブツブツ言い続けてきたT.バートン監督が、お父様の逝去をきっかけに語りだす、心境変化の兆し。
親のケチつけやすい面にだけフォーカスし、悠々と怒りをぶつけることができた青年が、静かに豊かに、成長してゆく。
   
人生の秘訣やコツが盛られ、ゆたかに膨らませたつくり話は、聞き手へのギフト。
息子ウィルが生まれた嬉しさ、元気な赤ちゃんの頼もしさ、これからの人生への期待と励ましを言い表すのに、ありのままの話じゃまったくぜんぜん足りない。
だから、"盛る"。
そんなほら吹き親父エドワードのこころねを、やっぱり掴みきれないまま許容して、ひろい心で受け止めてゆく息子ウィルの成長が、あたたかくてカッコ良い。
父殺し神話に帰結する幼稚なヒーロー映画の数億倍カッコ良い。
   
あなたのこと、わかりたいけどわからない。
その混乱に慌てなくなれることかもね、大人って。
そして、相手の生き方をなぞる。
父の人生を祝福する。
   
(.....しかし言うに事欠いて父さん(^^;))。
真相を知ったウィルの苦笑や(おいおい)っていう顔がさ、すごい好き。

   
【語られなかった物語】
つくり話、ほんとの話、その裏で、ひっそりつぐまれる話がある。
魔女おばさんが隠す、エドワードとの淡い思い出。
自分の心におさめようと決めた配慮が、ひときわ悲しく、美しい。
仕返しとか、もう、そういう気分じゃないんだね。
ラストシーンの彼女の仕草、さりげないけど素敵。
神秘的。
私も、彼女のような歳の重ね方をしたい。
    
私はこの映画を観てから、お葬式が苦手ではなくなった。
空いてしまった椅子の淋しさを、みんながぎゅっと身を寄せ、言葉を交わし、思いやって癒そうとする営みが、尊く美しいと感じるようになったから。
私も、その一端に加わりたいと望むようになったから。
   
弔う、ということがわかった。
この映画のおかげ。心から、ありがとうございます。
   
.....でもさ、ビッグフィッシュのデザインは、でっかいナマズよりもうちょっと濃いバートン・テイストを期待してしまうな。
あと「私の涙は当分乾きそうにない」の台詞は少々あざとい気が(^^;)。
ごきげんよう、センチメントに疎い私が通りますわよ。