クシーくん

トプカピのクシーくんのレビュー・感想・評価

トプカピ(1964年製作の映画)
3.7
キッチュ過ぎるアバンタイトル嫌いじゃない。そこに全編に渡って流れるエンテクノの旋律がエキゾチックな高揚感を否が応でも盛り上げる。

泥棒グループのコメディ物という、後続の「オーシャンズ」や「黄金の七人」などと同様、「ルパン三世」の始祖的作品群の一つで、映画史上的に意義ある作品程度に観る前は考えていたが、本作自体なかなか面白い。後の派手な泥棒映画と比べると至ってシンプルかつ地味な努力の賜みたいな盗み方で、最後の無音の金庫破りは後のMIPにも影響を与えたというが、一切劇伴を使わないのに観る側を誘引させる絵作りは流石。

泥棒仲間のキャラクターが全員個性的で、ロバート・モーレイの奇人ぶりやマクシミリアン・シェルの頭脳明晰な閃きとリーダーシップも楽しいが、やはり本作で最も魅力的なのは自称親父のオデキこと、ピーター・ユスティノフ演じるシンプソンだろう。ちょっと小遣い稼ぎをするつもりが意図しない方向で犯罪の片棒を担がされざるを得なくなる哀れだけど面白すぎる彼の演技はアカデミー助演男優賞も納得。酔っ払いの親父に頬ずりキッスされたり、魔性の女にもキスされて、挙げ句に脱がされてしまうセクシー要員(?)でもある。
メリナ・メルクーリは良い俳優だが、5人の仲間を手玉に取るニンフォマニアックの美女設定は流石にちょっと無理がある気がする。

トルコに行ったことは無いが、この頃から随分近代化したんだろうなあ。
イスタンブールの美しい街並みの各所でロケが行われており、今この規模の撮影は難しいのではないかと思う。いち早い復興を願うばかりであります。
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