nt708

驟雨のnt708のネタバレレビュー・内容・結末

驟雨(1956年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

戯曲が原作と言うだけあって会話がなかなか面白い。物語もとてもよく整理されていて、かつ面白く、とても複数の戯曲がもとになっているとは思えない。さすが水木洋子。脚本家としての実力の高さを強く感じる。

結婚まもなく倦怠期に入った一組の夫婦。彼らが抱える葛藤を描きながら、自分たちと同じく倦怠期の、それでいて男女に対する考え方がまるで逆の夫婦が隣に越してくる。共感しあう妻とお隣の夫。共感しあう夫とお隣の妻。普通のメロドラマだったらここで不倫関係に陥るのだろうが、そうさせないのが成瀬の慎ましいところである。こういう慎ましさに私は惚れているのだ。

最後に封建主義の亭主が少しだけ妻の言うことを聞くようになったのはせめてもの救いだろう。主張がぶつかってもそこは夫婦、、結局は仲良しなのである。姪っ子の新婚生活ほど、、とまではいかないが、戦争が終わり、まもなく高度経済成長期を迎える日本において結婚に対する価値観も大いに変わっていったに違いない。そういった時代の移ろいを人間生活の中に見出すのが成瀬は本当に上手いのである。

こうやって改めて成瀬映画を観ると彼に対する尊敬の念がますます増してくる。私も彼のような慎ましく、それでいて温かい映画を撮れたら良いのだが、、
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