不器用で天然っぷりがかわいらしい原節子と、家では虚勢を張っているが外に出ると器の小ささを露呈する胃弱夫・佐野周二。典型的な小市民夫婦の姿を見るようで、身につまされるとともに苦笑がもれる。
岸田国士の原作が良いのか、水木洋子の脚本ゆえなのかはわからないが、会話が繊細で味わい深い。特に冒頭のエピソード。倦怠期の夫婦の会話⇒夫が外出⇒姪の来訪⇒妻と姪の会話⇒夫が帰宅⇒三者の会話、登場人物が入れ替わるにつれ会話の様相が変わっていく。新婚の夫に対する不満と怒りで息巻いていた姪の気勢が削がれていく様子が可笑しい（香川京子の可愛らしさ！）。さらに、そこにはさまれる隣家の夫婦。すっとぼけた小林桂樹と、現代的な根岸明美のアンバランスぶりが良いアクセントになっている。いつまでも眺めていたいような絶妙な間と空気。
後半にかけてやや中だるみするものの、デパートの屋上のシーンなど印象的だし、紙風船の飛ばし合いに夢中になる夫婦の姿がまた心地よい余韻を残してくれる。
