緑雨

ミナリの緑雨のレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
4.0
愛憎を抱えて苦闘しながら懸命に生きる移民家族の物語を通して感じられるのは、大地、陽光、そして水が与えてくれる生命の豊穣。

教会、十字架を担ぐ男、エクソシズム、ダウジングなど宗教性やスピリチュアルな色彩も少なからず帯びている。クライマックスの不測の出来事すら全てを浄化するハレの場にも思えてくるのだ。

オープニングは車中。トレイラーハウスが見えた瞬間、後部座席のデヴィッド少年が身を起こす。彼の無垢な視線、表情が終始印象深くアクセントとなり、また、彼が走ることを止められているという事実が作劇の中で効果的に活かされる。

おばあちゃんと孫の絡みを中心にしたユーモアも好いし、夫婦(韓国版北村有起哉と江口のりこって風情)の精神を斬りつけ合うような厳しいやり取りも見応えある。見どころがたくさんある映画だが、その分何を軸に観ればよいのか少々座りの悪さを感じさせられたのも確か。そのせいか、中盤はやや中弛みを憶えた。

自宅での箪笥の抽出しと孵卵場でのカゴの落下とをカット繋ぎする演出にはオッと思わされたが、あのようなトリッキーさがもうちょっとあってもよかったかも。
緑雨

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