ぐるぐるシュルツ

七人の侍のぐるぐるシュルツのレビュー・感想・評価

七人の侍(1954年製作の映画)
4.6
生きることは戦うことじゃないのなら、
戦わずに何にも変わらないことが勝利であるなら。

〜〜〜

午前10時の映画祭で、
大画面で高画質で見てきた。
20世紀の大傑作。
いつかの午前10時で『用心棒』を見た時から、黒澤映画は映画館で見なくちゃと思って鑑賞を留めといた作品だったから、
開幕でいきなり、なんとなくカタルシス。

そして、どこの要素を切り取っても、
そのまま『娯楽』になっているね。
観客の視点を完全に掌握している感覚は、
漫画のドラゴンボールだし、
仲間集めの高揚感はワンピース。
日本が持つ大衆娯楽の核心は、
もう彼がとうに作り切ってしまっていたのか。

多くの方が仰るように3時間半の大作なのに、
全然退屈しない。
むしろ、その長さのおかげで、
七人のお侍さんたちに親近感覚えて
最後にはめっちゃ好きになっている。
あぁ、
自分は腐れ百姓ですわと思ったり(笑)
菊千代とかは、
どうあがいても好きになるキャラクターで、
三船敏郎のクール・ダンディー・キュート
たっぷり詰まっておる。

旗を立てるシーンからの、
野武士襲来はもう完璧。

黒澤明らしく一人一人に特徴的な行動や、
一つの画角に大人数がひしめく場面も
お腹いっぱい見られて大満足だった。

〜〜〜

タイトルとは裏腹に、
武士達の生き様よりも、
実は、百姓の闇深さが主題。

酷く下衆だけど仕方なさもある。

菊千代が泣きそうになりながら訴えかける場面や孤児となった子を抱く場面、
それらが作品の奥行きをがっちり拡げて行く。
これが、世界の三船か。

とは言っても、
僕らはきっと侍ではなくて『百姓』なんだよな。
そこにはきっと、
西洋の農民・小市民・開拓民よりも
えぐみがあって。
遠藤周作の『沈黙』に近い感情。

だからこそ、
終幕の島田官兵衛の「負け戦」発言をどう捉えればいいのか、
ひどく戸惑ってしまった。

初めから金も名誉も求めずに始めた戦いなのに、
どこかで何か変わるかもしれないという気持ちがあったのかもしれない。
この醜い百姓の習性は武士たちが生み出したんだ、と菊千代に怒鳴られてからは、
何かを償うような気持ちがあったのかもしれない。

〜〜〜

もっと浸りたいと心から思えた。
1954年公開だから66年前の作品か。
出ている役者・製作者は
どれほどご存命なのだろうか。
彼らが遺したものは、
あまりにも大きい。