みかんぼうや

夕陽のギャングたちのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

夕陽のギャングたち(1971年製作の映画)
4.2
【エンリオ・モリコーネは最高の映画作曲家と確信する、彼の甘く切ない美旋律マジックとレオーネの描く泥臭い男の友情と裏切りに満ちた化学反応が作る極上の人間ドラマ】

ずるいわ~、このセルジオ・レオーネ演出の“回想シーン”とエンリオ・モリコーネの甘く切ないメロディの組み合わせ!これだけで「なんか物凄く胸に染みるいい映画を観た」ってなっちゃうもの。これは同監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ(以下、ワンス・アメリカ)」を観たときと全く同じ感覚。いや、どちらも間違いなく面白くて素晴らしい映画なんですけどね。

映画全体の雰囲気は、オープニングからたまらなく“泥臭く男臭い”。もう、爽やかさやスタイリッシュさとは対極にあるような作品。おまけに観始めた時は、正直なところ、ウエスタンカウボーイの強盗物で「明日に向って撃て」をより地味でこじんまりとしたような作品かな?なんて思っていたのです。

だが、とんでもない!中盤以降、あんな形でどんどん話のスケールが大きくなっていくとは想像もせず(ネタバレになるので詳しくは書きませんが)、話が進むにつれてその世界観にどんどん魅了されていき、最後には熱い男たちの生き様にまさかまさかの号泣!作品の序盤時点では、最後に泣かされるなんて思いもしませんでした。

物語の裏にあるテーマは、「ワンス・アメリカ」と同じく、“男の友情と裏切り”、そしてきっと“体制への反発”もあるのだと思う。本作の舞台はメキシコで時代も物語の設定も全く異なるけど、セルジオ・レオーネ監督はこのテーマにかなり拘りをもっていたのだろうか?両作ともに同監督の“ワンス・アポン・ア・タイム三部作”に数えられていて、あと一作の“ウエスタン”を観れば、その共通性や監督の考えをより理解できるかもしれないと思いました。

冒頭にも書きましたが、エンリオ・モリコーネの音楽はただただ絶品!彼の楽曲が使われる代表作は「ニュー・シネマ・パラダイス」だと思いますが、「ワンス・アメリカ」のメインテーマも「ニュー・シネマ」に負けず劣らず素晴らしい楽曲が多く、本作も音楽に期待していました。オープニングは若干エキセントリックなな音楽から始まり、異様に癖になる観た人しか分からない「ション、ション、ション、ション」という変な声が気になっていましたが、回想シーンなどに使われる哀愁漂うメインテーマがやはり物凄く素晴らしいメロディで、ちょっとしたシーンすら、心に染みるシーンに早変わり。気が付いたら違和感を感じていた「ション、ション」も楽曲に無くてはならない大切な音楽の一部になっていました(観た人なら理解してくださると思います)。

後でYouTubeでメインテーマを聞き直したら、映画の情景を思い出してしまい、また思わず目頭が熱くなる・・・それほどにエンリオ・モリコーネが作る楽曲というのは作品やシーンにマッチしているのだな、と思いました。もう断言します、私はエンリオ・モリコーネが世界で一番好きな映画音楽作曲家です。

レオーネの音楽の使いどころも抜群で、「ワンス・アメリカ」でも見られた回想シーンでの音楽挿入はもちろんのこと、今作中盤の橋の大爆破シーンなど、人も大量に死ぬ本来ならば壮絶なシーンなはずなのに、ここにモリコーネの甘い美旋律を入れてくるあたりが、なんともたまらなかったです。

最後に、ジェームス・コバーンがとにかくカッコいい!「明日に向って撃て」のポール・ニューマンに全く引けを取らない存在感と渋さ。今のイケメンや逞しい男たちとは違う、この時代ならではの独特の魅力でした。

本作を観て、三部作の残る1作、“ウエスタン”も絶対に観なければ、と確信しました。“ウエスタン”も音楽はエンリオ・モリコーネ。またこの心に染みる物語と音楽、そして余韻に浸ることができるか!楽しみで仕方ありませんが、こちらも3時間弱の長編作品なので、また少し時間を空けて楽しみたいと思います。
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