HK

白いリボンのHKのレビュー・感想・評価

白いリボン(2009年製作の映画)
3.8
ハネケ作品を観るのは『ハッピーエンド』に次いで2本目。
フィル友のleylaさんから本作や『愛アムール』が初心者向けらしいと聞いてCS録画。
『ハッピーエンド』は現代劇でしたが、本作は第一次大戦前夜のドイツのある村が舞台。
しかもモノクロ作品でずいぶんと雰囲気が違います。

ミステリー作品と紹介されており、たしかに小さな村で不可解な事件が次々と起きますが、ラストで全ての謎が解明されてスッキリという類の作品ではありません。
何も解決しない(?)ラストを迎える点では『ハッピーエンド』と同じ、というか、実は我々の日常も何一つ問題は解決されぬまま続いていたりするわけですが。

この小さな村で起きたことは当時のドイツという国そのものに起きたことの縮図だと冒頭で語られます。
映画は最初から最後まで重たく不穏な空気に包まれ、次々に起こる事件のひとつひとつも陰湿で悪質、犯人も不明のままとても不安でイヤな気持ちにさせられます。

本作の子供たちを見ていて、SFの古典『光る眼』(原作ジョン・ウィンダム、二度映画化)の子供たちを思い出しました。
それは『ハッピーエンド』に登場する無表情な少女にも通じます。
ナチズムやファシズムなど様々な思想や宗教がその地域や国に浸透し、親から子に伝播していくのは宇宙人の侵略と似たようなものかもしれません。
でも今回、その子供たちをつくったのは地球侵略目的の異星人ではなく、実の親たちであり、この村です。

また、この映画には私の嫌いな『ミッドサマー』に似た不快な要素も見受けられます。
しかし、映画としての格調の高さには大きな差があり、不思議とこの作品に対しての嫌悪感はありませんでした。
観終わって、何も解決していないのに妙に名作の余韻すら感じさせるのがハネケ流なんでしょうか。

本作はオーストリア、ドイツ、フランス、イタリアの合作。
カンヌのパルムドールとゴールデングローブの外国語映画賞をはじめ、賞を山ほど受賞していたことは後から知りました。
HK

HK