しゃおりん

少年は残酷な弓を射るのしゃおりんのレビュー・感想・評価

少年は残酷な弓を射る(2011年製作の映画)
4.2
ヒッチコックの『サイコ』を彷彿とさせる理不尽な悪。
ケビン側からの目線が欠如しているから彼が何を考えてるのか全然分からないのが怖い。行き過ぎた愛なのか憎しみなのか反抗期によるものだったのか。それが分からず気味悪さだけ増幅させながらただ予想することしかできなかったから、最後あっさり終わって若干消化不良感あったけど、その読めなさも良かったと思う。
あと、印象的なのは赤色。冒頭のトマト祭りから始まってどの場面にも強烈な赤!
ケビンと一緒に住んでいた時はそんな赤色の印象はなかったけれど、彼の情動の赤なのか血生臭さの赤なのか、ケビンと離れた時から映画全体の赤の印象が強い。スーパーでケビンの起こした事件の被害者の親とすれ違ったときにとっさに隠れた棚にぎっしり詰まっていた真っ赤なトマト缶など、赤がある場面には必ずケビンへの回顧が伴う。
エヴァの育て方が悪かったとかそういう風には一切見えなくて、ただただケビンの不可思議さによって崩れたエヴァの人生はその赤色が訪れる度に過去へ引き戻されて気の毒だった。このエンドからエヴァが過去の中だけで生きずに前に進むことができたらいいのだけど。