カタパルトスープレックス

青春神話のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

青春神話(1992年製作の映画)
3.6
台湾ツァイ・ミンリャン監督の長編デビュー作です。ここからリー・カンションとの長いコラボレーションがはじまります。鬱屈とした若者の青春群像劇。

舞台は台北。仲間と公衆電話の集金ボックスを壊したり、ゲームセンターの基盤を盗んで刹那的な生活をするアザー(チェン・チャオロン)、両親に無断で予備校を辞めて、返金された学費を使って当てどなくさまようシャオカン(リー・カンション)の二人が主人公です。シャオカンの父親はタクシー運転手。ある日、父親がシャオカンを連れて映画に行こうと誘います。その途中でアザーが乗るバイクと出会い、アザーにタクシーのサイドミラーが破られます。鬱屈とした焦燥感を共有する二人の邂逅、その行方は……という話です。

セリフが非常に少ない映画で、観客の想像に委ねている部分が大きいです。なぜ登場人物たちはそのような境遇にあるのか、彼らは何を求めているのか。特に鍵となるキャラクターがアザーの兄の恋人アクイ(ワン・ユーエン)です。アザーに徐々に惹かれていき、関係を結びます。その二人を追うシャオカン。アクイはアザーが満たしてくれない関係性を求めてテレクラも利用したりします。そして、シャオカンもテレクラに向かうのですが……。アクイが満たされないものをシャオカンは満たすことができるのか?それはわかりません。この映画の登場人物たちは誰一人として満たされていないのですから。なぜ、そんなことになったのか。

リー・カンションは「シャオカン」として繰り返しツァイ・ミンリャン監督作品に登場することとなります。まだ、「長回し」のような映像的な特徴は出ていないものの、「水漏れ」のような繰り返し登場するモチーフが既に登場します。