このレビューはネタバレを含みます
1916年167分の大作。どうやって上映したんだか。さらに驚くべくは1919年に日本公開という。
人間のイントレランス(不寛容)をテーマにした大作。圧巻。多分これが世界で初めてイエス役が登場した映画。受難週の磔刑まで描くがあくまでモンタージュの素材にしている点が良い。舞台は新バビロニア帝国におけるオピスの戦い、イスラエルにおけるイエスの受難、フランスにおけるバルテルミの虐殺、現代アメリカ(当時)における冤罪事件。入り組んで重なる四つの時代、四つの場所に通じるのは人間の不寛容。自分と異なる立場や信教を排除する暴力。3時間弱のほとんどはイエスの受難を除いた三つの舞台で、クライマックスに来てイエスの磔刑が挿入され、不寛容の象徴となる。
しかし愛に尽くし駆けつける者たちがいる…バビロンの山娘、愛娘、青年プロスペル。不寛容の世界を描きながら愛を示さんとするグリフィス。十字架のイエスの頭上に響く雷ののち、現代(当時)の第一次世界大戦の戦場に天上の軍勢が降り立ち、世界は愛に満ちる。不寛容の象徴は愛の象徴でもある。
ところで関係ないんですが、この天使の映像は、聖誕における祝福か黙示録における再誕の預言のふたつをイメージしました。「いと高きところには栄光、神にあれ、地には平和、御心に適うひとにあれ」(ルカ2:14)あるいは「『然り、わたしはすぐに来る。』アーメン、主イエスよ、来てください」(黙示録22:20)の聖句が思い浮かびました。まあ…もう印象的な聖句しか覚えてないというのもありますが。なんでしょう、巨大セットにおかしいエキストラで叙事詩を見せつけられてからの特撮で、なんだか荘厳に感じたからでしょうかね。頭の中に“メサイヤ”の“GLORY TO GOD”が鳴り渡りました。
多彩なカメラワークだけど特に固定がよくて、その奥行の作り方がすごい絵画的。絵画的といってその通り書割やフィルムを重ねているシーンもあるが、基本的に隙なく奥の奥までセットとエキストラが配置されている。超巨大セットもテンション上がるものの、セットに配置された小物やリアルの豹、リアルに燃やす炎などの熱意に胸を掴まれ見入ってしまう。
玉ねぎは昔から匂う野菜代表例なんだな。見る感じニンニクの芽みたいだけど笑ってしまった。バビロンの山娘はいちいち萌える。またバビロン愛の神殿の踊りは注目ですね。'16年か…ちょっとニジンスキーの“牧神の午後”っぽくて笑えます。