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ビフォア・サンライズ 恋人までの距離のslowのレビュー・感想・評価

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ジェシーはしっかりアメリカ人で、セリーヌはちゃんとフランス人だ。異なる気質や思想をカードのように切りながら、時間を楽しむふたりのことが、何度観ても素敵でたまらない。古より平坦な今日は、手相ひとつで山にも谷にもなったのだろうし、科学技術はゆうに時空を超えて行く時代。心は豊かさを知っているし、その上で知る貧しさは、幸せを冷静に分析させる。決して感動を押し売りしてくるような物語ではない。それでも、旅の終わりを見届ける頃には、静かに泣けて来てしまう。それは、その夜ふたりが眠ることなく積み重ねた刹那への反抗、意外性というアトラクションがなくても過去と未来を語らうアンダンテな心地良さ、たとえ全体像が想像通りの造形であっても、質量はその何倍にも感じられて、この胸の中で輝きを失わないからだ。
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