そこにある他人とそっくりに動かせた体、それを他人のもののように働かせた心を、わたしは知っている。それは止むに止まれず日常を生きるわたしのことでもあると、彼女は知ってくれていただろうか。これは彼女が自分に正直に生きた結果、という物語ではないのだろうと思う。ただ、何が彼女をこのような放浪の旅に駆り立てたのかはわからない。わからないけれど、何も言葉には変えたくなかった。不躾とも取れる彼女の態度からは、そんなふうにも読み取れる。道中で出会う人々も皆、ふらりと現れ、ふらりと立ち去る彼女に、ここにいたかもしれない自分のことを投影しているようだった。打算にまみれて釈然としないやりとりが、飢えや孤独よりもつらい時がある。この最悪にして最愛の物語は、風に吹かれる煙のように留まることはなく、わたしはそれを、この目でとらえられなくなるまで、見届ける他なかった。
