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ゲルハルト・リヒター・ペインティングのslowのレビュー・感想・評価

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色を重ねていくというよりは、時間を重ねていくよう。生まれては消える存在、現象。驚くべき速さで膨張し、数年をかけて収縮する、孵化して間もない、そう見える宇宙の亡骸と、その呻き声。幾ら時を経ても、発見されるとは限らない世界の生態を、リヒターは小さな窓の中に創り上げる。わたしの目にはそう映っていた。考える頭は、理解しようと考える頭より先に、その頭の中にある解、またはその代わりとなる解へと次々に到達する。芸術とはいかに短く、自分を説き伏せて、いかに永く知らぬふりをしていられるかという、半ば妥協のようなものに割く時間と労、そのほんの上澄みのことなのだろうか。まやかしと現実の狭間で、彼は完璧を知らないままにして、既にその究極を理解しているのかもしれない。
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