真田ピロシキ

ダークナイト ライジングの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

ダークナイト ライジング(2012年製作の映画)
4.3
この映画のダメ要素は分かってる。格闘アクションは垢抜けず話には粗が多い。ベインの計画なんて冒頭のハイジャックからして穴だらけ。ベイン自体全貌が明らかになって行くと案外ショボい。前作を神のように崇めている人には拍子抜けも良いとこだろう。それでもこの映画無くしてノーランサーガに幕は閉じれない。本作はヒーローという存在に答えを出す。コミックファンが望むコスプレイヤーとしての正しさではない現実にあるべきヒーロー像を。

前作でジョーカーに翻弄されたように現実的であろうとすればするほどスーパーパワーもなければ完全に法を無視もできないバットマンに成せる事はない。不平等や貧困が生み出す悪徳を前に数人犯罪者を痛めつけたからって何になる?それをどうにか出来るのは覆面ヒーロー バットマンではなくブルース・ウェイン、生身の人間だ。アルフレッドが通して言っていたように仮面を脱いで自分を生きなくてはいけない。一度再起したもののこの時はまだ不完全で、奈落に落とされ再浮上してから遂に始まる。バットマンとしての虚像にケリをつけるための戦いが。本作が指し示すヒーローは名もなき市民が心の中に抱く象徴。両親を喪った子供に世界は終わってないと励まし希望を紡ぐような意思。次代を担うブレイクの本名がコスチュームなど着てないロビンだったことに大きな意味がありヒーロー映画たらしめる所以。

何かで読んだところによると本作はヒーローコミックが存在しない世界らしくて、その特異性で成り立っている。スーパーヒーロー前提のジャスティスリーグで手持ち無沙汰なバットマンを見てると、迷走ついでにDCEUから切り離した方が得策ではと思う。本作ですらベイン及びタリアとの展開や決着はジャンルとして最低限の申し訳をしているようで、ヒーロー映画でしか出来ない話をやっててダークナイトリターンズを想起させる演出がそこかしこにあったりもするのだけれど、ヒーロー映画であるために足を引っ張られてもいる。ベインに関してはコミックやアニメでは脳筋覆面レスラーにしか見えなかったのを残念な最期だったとは言え大者として良アレンジしていたと思う。これ以外でちゃんと頭の切れる強者に見えたベインはゲームのアーカムビギンズくらい。黒幕の癖にベイン以上に間抜けな最期だったタリアはやっぱり息子を作らないとダメじゃね?自分的にはヴィランを出さないバットマン映画を一度見たいと思っている。イヤーワン系のオリジンではなく熟練のバットマンで。それをやっても許されるキャラだと思うんだよね。