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アンヴィル!夢を諦めきれない男たちのGreenTのレビュー・感想・評価

3.5
「有象無象のメタルバンドの本当の末路」を赤裸々に曝け出すドキュメンタリーで、2008年にリリースされた時すごい評価高かったのは、リアリティが半端なかったからだと思う。

バンドのドキュメンタリーって言ったら普通、バンド結成からどんどん有名になっていって、ピークから転げ落ちて・・・・みたいなのがほとんどだけど、アンヴィルは実際には一度もブレークしていないと思う(笑)。1984年にボン・ジョビやホワイト・スネイクと日本にツアーまでしたのになぜ・・・・と言うオープニングで始まっているけど、80年代初頭にはアンヴィルみたいな「クサメタ」バンドは掃いて捨てるほどいて、どれがどれだかわかんないくらいだった。

しかしメタリカのラーズ、アンスラックスのスコット・イアン、ガンズのスラッシュまで、「アンヴィル好きだった!」ってインタビューに答えているけど、電動コケシでギター弾いたりするのが十代前半くらいまではいいかもしれないけど、知的レベルがそれ以上になったら卒業しちゃう音楽だと思う。

しかし私は、世代的にど真ん中だったにも関わらず、アンヴィル完全スルーしているので、代表曲と言われる『Metal on Metal』を改めてちゅ〜ぶで聴いてみたけど、80年代初頭のバンドの定番で、オリジナリティ全然ない!

でもね〜、こう言う「クサメタ」好きな人は、本当に生涯好きなのよね・・・。

映画の邦題にはほとんど良いものがないけど、この『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』というのは、内容を端的に表していて良い!「夢を諦めない男たち」だったら、美しいじゃない?キラキラ輝いている感じがする。しかし、「諦めきれない」という表現は、「やめときゃいいのに」っていうニュアンスが(笑)。

本当に、観てて目を覆いたくなるもん。給食の配達とか家の修繕とか、半端仕事をしながら生計を立てているのに、5週間も休みとってヨーロッパツアーして、2〜3人しか入っていないライブハウスで演奏したり、出演料払ってもらえなかったり、電車のチケットが取れなくて移動できなかったり、最後お金無くなって野宿したり。

まだデヴューする前、20代の時はボロいバンに楽器とマーシャル・アンプ積んでドサ回りするのも楽しかったけど、50歳だもんなあ。

夢を諦めないところに感動した人も多いようだけど、私は正直言って、ギターでボーカルのリップス、怖かった。普段はニコニコして、良くいる「気のいいメタルにーちゃん」なんだけど、ロックスターになる夢について語っているとき、唇ブルブル震わして、涙目になりながら、こぶしでテーブル叩いて熱弁ふるってるの見てて怖かった。まあ、あのくらい情熱があるからこそ続けてきたんだろうけど、個人的にあんまり親しくなりたくないなあ・・・。

2008年の時点では、この映画自体の評価は高くても、アンヴィルはブレークしないんだろうなって思っていたので、今回、この後どうなったのか調べてみたら、この映画のおかげで今や17枚目のアルバムまで出したそうですね!私が見つけたのは2017年のリップスのインタビューなんだけど(https://www.goldminemag.com/articles/anvil-still-metal-metal)この中で彼が

That’s my perspective of the world. I write from my core, and that’s what it is. Lyrics come from a place in your subconscious. A lot of times, you don’t realize the depth from which you wrote until after you finish. There are a number of places I’ve gone back in my career, looked at what I wrote, and go, “Geez, where the hell did I get that from?” That goes to say musically, too. You just write and let it write itself, really.

と言っているのには共感した。つまり、自分の書く歌詞や曲は、自分が世の中をどう見ているかを反映しているんだけど、それは自分の無意識から出てくる。全部書き終わるまで、(自分の中の)どんな深いところから何が出てくるのかわからない。昔書いたものを見て、「どっから考えついたんだ、こんなの?!」って思う、と。私も映画の感想を書いていると、自分が物事をどう見ているのか、自分でも知らなかった自分が見えることがあるからやっていて、それは年を取っても辞めない、ってところには共感できる。

そして今では、お金のための仕事からはリタイアして、ずーっとツアーをしているそうだ。「毎日がバケーション、毎日が週末!楽しい!」って感じで、「なんで大成功を収めたバンドが解散ツアーなんかするのかわからない」と言っている。「20代、30代の頃は、家族を食わせるためにツアー出来なかった。でもあの頃は、女房といい関係が築けたから良かったけど」って。

映画の中でも、奥さんがすごいんだよ。リップスの奥さんは、普通のおばさんなんだけど、「彼が成功していようがしていまいが、彼は私が愛している男なの」みたいな。ウルウルしながら喋ってるし。ドラムのロブの奥さんは、未だにあの頃のメタル・ヘアーで、「私は80sが好きなのよ」って。こういう奥さんじゃなかったら、別れてでもバンド続けていたんだろうか?逆にめちゃくちゃ有名になっていたら、この人たちは別れていたのか?興味深い。

DVD特典のインタビューでラーズが「成功する、しない、とか、成功してないのに、あんなトシになるまで演っててすごい、とか、そこばっかり強調されるのは、どうかなあ。成功したから続ける、っていう問題じゃなくて、続ける人はどんなレベルでも続けるものなんだよ。成功する、しないということにウエイトを置き過ぎて、デヴュー前と後の音楽が著しく変わったバンドもあるし・・・・」って言ってたけど本当にその通りで、私が昔一緒にバンド演ってた人たちもかなり最近までバンドは演ってたし、アンヴィルみたいに底辺で頑張る人がいるから頂点まで駆け上がって行くバンドがあるんだもんね。

笑っちゃうのは、この映画のラストを飾るのが、日本のロック・フェスに出演するところなんだよね。『スパイナル・タップ』でも、最後は日本での公演で終わっているけど、アンヴィルは実話なのだ!いかに『スパイナル・タップ』が秀逸なロックバンドのモキュメンタリーなのかがわかる。