もっちゃん

人狼 JIN-ROHのもっちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

人狼 JIN-ROH(1999年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

いわゆる押井監督の「ケルベロス・サーガ」の一つであるが、ほかの作品は一切見ていないので詳細は分からないまま鑑賞。

時代は戦後。戦後といっても、我々がたどった歴史ではなく、敗戦国となった日本が戦勝国であるドイツに占領されたという架空の設定である。そして今作は敗戦から10~20年たったという時代設定である。

全共闘世代で学生時代は闘争に明け暮れていたという押井監督らしい時代設定であるが、今作の時代でも闘争に明け暮れている。だが、現実の学生闘争・安保闘争が保守と革新の対立であったのとは異なり、今作では体制(首都警)と反体制ゲリラ(セクト)の対立として描かれている。帝国主義的国家VS左翼反体制という対比は全共闘世代押井らしい。

そんな中で特機隊と呼ばれる武装集団に属する伏一貴が反体制側の通称「赤ずきん」の少女と恋に落ちるという物語である。いわば、水と油の存在である二人の禁断の恋を「赤ずきん」の寓話を参照しながらポリティカルに描いている。

「ケモノ」と通称されるほど強い伏は自らの進むべき道のりを喪失している。特機隊員として抜群の身体能力を要する彼は自らの運命(隊員としてテロリストを一掃する)に逡巡している。それが赤ずきんにおける「オオカミ」と重ねられている。オオカミは傷つけるべくして、赤ずきんを殺さねばならなかったのか。オオカミは本能に抗った挙句に凶行に及んだのではないかというのが今作の新たな知見である。