乙郎さん

ドライヴの乙郎さんのレビュー・感想・評価

ドライヴ(2011年製作の映画)
3.0
不協和音とポップスの対比や独特の絵作りに顕著だが、この映画は全編にわたって「作り物です」というメッセージを発している。ここが評価の分かれ目。特に今はまだ映画史的に評価が確立していないし。正直にいえば一回目観た時は全然乗れなかった。ただ、このフィクションに加担する気持ちで見れば、これだけハリウッド的スリラー文法を守っていないのに、なぜこれほどまでドキドキさせてくれるのだろう。主人公の寡黙で無表情な様子は説明を省いている分自分の内面を映し出してくれるようだ。ただ、いくらなんでも説明しなさすぎの個所もあるが。
やはり小さくない欠点として、スタンダードと強盗のエピソードとニーノたちのエピソードの接続はあまりうまくいっていないように思える。ここは原作でもうまくないと思った。また、ドライバーの過去エピソードをカットしているのは効果をあげている部分もあるが、初見だと映画へのとっかかりを失うおそれもあると感じた。親切な映画ではないのは確かだが、どうか観客から一歩歩みよってほしい。そしたらドライバーは秘めたる優しさを見せてくれるはずだ。
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