本作は、叔父夫婦の元を訪れた盲目の女性・サラが殺人事件に巻き込まれていく様子を描いたスリラー。
フライシャー監督の恐怖演出が冴え渡っている。
眠るサラの隣に横たわる死体の絵は、特に恐ろしく、もはやホラーの領域だ。
家中に惨殺された死体が転がっているのに、盲目のサラは全く気付かない。
死体だらけの家で普通に生活を送るという光景が何とも恐ろしい。
「気付いてくれ」と、何度願っても、サラは絶妙に死体をスルーしてしまうのだ。
サラを演じたミア・ファローの演技が素晴らしく、見えない心理と行動を見事に体現している。
目線を一点に集中し、″手″と″足″だけで物の存在を確認する。
そろそろと注意深く歩き、床に散らばったガラス片をギリギリの距離で避けていく場面にハラハラさせられるのだ。
そして、死体の存在に全く気付かないサラが徐々に異変に気付き、やがてパニック状態に陥る姿は真に迫っている。
助けを求め一人泣き叫ぶサラの姿が絶望的だ。
ウディ・アレンの作品で見せるライトでコミカルな演技だけが、ミア・ファローの魅力ではない。
「見えない演技」という、想像するだけで難易度の高い役どころを演じ切っている。
また、本作とどうしても比較したくなるのはオードリー・ヘプバーン主演の『暗くなるまで待って』。
ミア・ファローの「見えない演技」は、ヘプバーンに負けず劣らず素晴らしいものだったが、″恐怖演出″という面では本作の方が一枚上手だったと思う。