スコセッシフォールド全開

黒い家のスコセッシフォールド全開のレビュー・感想・評価

黒い家(1999年製作の映画)
4.3
フルポン村上のようなオーバービビリ演技をみせた内野聖陽さんに拍手を送りたい。オーバーすぎて笑える?そんなことはない。めちゃくちゃリアルだった。共感したし、勇敢だった。
三善、菰田家の床下の十数体の白骨死体。ライターの小さな光で全体が見えない。ガッツリ見せないし、見せてもすぐに隠す。想像力を働かせる。
幸子が帰宅し、電気を付けると闇が消え、急に怖くなくなる。いや、幸子の無慈悲な殺人鬼としての脅威にフォーカスが当たるので、恐怖対象の移転と言ったほうがいい。
恵がなにをさせられたのか。不明瞭なのがいい。発見時の状態が悲惨すぎて、拷問の凄まじさが伝わってくる。女優の演技力も引けを取らない。口に新聞紙を詰め込まれたり、身体をテープで巻かれたり、序の口レベル(失礼)の拷問をピックアップする悪意ある回想に、どうせ見せたとしてもお前らに伝わらないだろ!と強烈なパンチを喰らう。
殺人鬼が目の前にいるのに叫ばないで!なシーンは今までいくつも見てきたけど、今回ばかりは同情できた。その叫ぶ恵を若槻が“黙らせる&安心させる“ディープキスをする。ここ最近で見たキスシーンで一番カッコよかった。その数十分後に、ここ最近で見た一番謎なキスシーンとおしゃぶりシーンを目撃することになるのだが。
消化器を持ったら殴って確キルが定番なんだけど、まさかの噴射。
若槻のトイレ途中から幸子の攻撃が始まるのに意味がある。尿意や残尿感の忘却に説得力がある憂慮すべき事態。恐怖の菰田家に劣らないハラハラ感。若槻が漏らすと彼自身と我々鑑賞者が安心感に包まれる。とうとう幸子倒れたか、となる。強制エンディング失禁技法と名付けよう。
FAXによる脅迫は怖くないのでいらない。なのでプールのシーンも全カットでいい。