RAY

この子の七つのお祝にのRAYのレビュー・感想・評価

この子の七つのお祝に(1982年製作の映画)
3.2
“心の担い手”


とても怖い作品でした。

幾つかのレビューを読ませて頂いた上で鑑賞したのですが、ホラー的な“怖い”なのかと思っていましたが(ある意味ホラーなのですが)、ミステリーである上での“怖い”でした。
所謂、人間の恐ろしさを描いた作品です。

岩下志麻さんが主演の作品ではあるのですが、そういう意味では岸田今日子さんが最も存在感を放っていたと思います。


この作品を観ていて感じた特徴のひとつは、確かに“怖さ”を描いた作品ではあるんですが、日本映画特有のじわっとしたそれが表現されている訳ではない点です。
どちらかと言うと、淡々と移り変わって行く。
そう感じました。
このことについてレビューを書きながらあらためて、この表現は敢えてその様に作られたものなのかなと思っています。
時々、自分の当たり前と人の当たり前が違ってびっくりすることやされることはありませんか?
それは良いとか悪いとかではなくて、自分が長年そうしてきたことは、間違っていてもいなくても“普通”のことであって、“日常”なんです。
だからこそ、この映画は淡々としていたのかなと感じたんだと思います。
この映画の“怖さ”はそこでもあって、淡々としているからこそ気付く“怖さ”や引き立つ“怖さ”があるのです。


あまり書きすぎるとネタバレになるので書きませんが、この作品は決して犯人探しを楽しむ映画ではありません。
冒頭に書いた様に、人間の怖さを描いたサスペンスです。

この映画だけに言えることではないけれど、人間が怖いのは、結局、人をつくるのは人だからです。
人格のつくられ方だけではなくて、関わった相手によって人生が変わったりすることもある。
人の人生は知らず知らずのうちに狂って行ったりもする怖さもあると言うことを知るのです。
それこそ、先に書いた“当たり前”の話の様に。
逆を言えば、誰かと深く関わると言うことは、その人の人生にも影響を及ぼすと言うことを肝に銘じて接する必要があるのだと思います。


いずれにしても、じめっとしている訳ではないけれど、日本映画らしく人を描いた作品であると思います。


観て良かった。
RAY

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