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関東無宿のzhenli13のレビュー・感想・評価

関東無宿(1963年製作の映画)
3.6
散漫な脚本でダレるもののそこは清順監督。めくるめく画運びの妙で職人ぶりを発揮している。やはり木村威夫の美術が素晴らしい。特に十二角の障子に囲まれた賭場のセットがシネマスコープの横幅に美しくはまり、いつもの色彩や外連味は控えめと思いきや小林旭の見せ場となりパーンと障子がはねて赤い背景が登場するところにぐっと来る。もう『陽炎坐』だ。

なによりファーストカットで女子高生役の中原早苗や松原智恵子らのクローズアップの切り返しで意表をつくところが面白い。
小林旭が待つ宿で床の間にあったススキの花器をわざわざ倒して、そのあと床の間ではなく畳に配置することで何度もススキと人物が一緒に映るショットを入れてくる。
また小林旭と伊藤弘子の回想シーンなどは照明使いが極まる。宿屋で三下の鉄が出て行くときに揺らされた電灯と、クライマックスの賭場で天井から揺れる白いぼんぼりのような電灯とが呼応する。
作り込まれた美術はセット(雀荘「いづや」の構造も普通に見えるけど面白い。奥の間の様子が少し見えるように入口が斜めに配置されていて、二階の障子から一階の雀荘を眺められる)だけでなくロケーション撮影も非常に好い。これは『峠を渡る若い風』や『ツィゴイネルワイゼン』でも感じた。昭和30年代の風景に対して明治時代のような侠客小林旭のミスマッチぶりが際立つ。

にしてもヒロインが誰なのかわからん。
松原智恵子は大変可愛らしいが出番少なく小林旭と伊藤弘子の仲を嫉妬する役になるのかと思いきやほぼ絡まず。明らかに脇役顔の中原早苗が脚本的にかなり起用されてて、ラストをドライに締める重要な役どころとなる。
伊藤弘子はその魅力がちょっとわからない。『刺青一代』のよろめき熟女は好かったけど、田中真紀子似のためカマトト声じゃなければいかつく見えてしまい何故年若い男たちにひと目惚れされる役なのか説得力がない。
清順監督は「女優は綺麗ならそれだけでいい」と宣っていたのだけど、時々え?と思うような女性を起用する気がする。野川由美子や和泉雅子など生命力強そうで華のある役者はぴったりだが、宮崎萬純とか江角マキコとかはどうなのか。いかつくて和装が似合わない。ビジネス的なものなのか。あでも楠田枝里子は意外と好かった。
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