佐藤哲雄

最後の初恋の佐藤哲雄のレビュー・感想・評価

最後の初恋(2008年製作の映画)
2.0
最後の初恋

『運命の女』で共演したリチャード・ギアとダイアン・レインが、その5年後に再共演していたようなので、その流れを鑑みるに一抹の不安を禁じ得ないまま再生してみたよ。

結論から述べると、不安は的中し、最後は失意に暮れた私だったよ。

ストーリーが実に浅かったよ。

医療過誤により訴訟を起こされている主人公で外科医(リチャード・ギア:58歳)と、夫(クリストファー・メローニ:まだピッチピチの46歳)の不義により別居中で海辺の宿の女将代理人(ダイアン・レイン:まだ肌もツヤツヤな42歳)との、大人の恋の物語だったよ。

まあ、タイトル通りと言えばその通りなのだが、この映画の最も重要なテーマは、医療過誤だと私は思うよ。

単なるデキモノの切除手術如きで妻を失ってしまった夫(なんとスコット・グレン:この時すでに66歳)と、亡くなってしまった妻、そして、母を失った息子、そして、多忙な手術スケジュールによって外科医としての感覚が麻痺してしまい、半ば遊び半分な気持ちで手術に臨んでいた主人公との、深い心のやり取りにスポットを当て続けるべきだったよ。

主人公の悔悟の念、40年近く連れ添った天使のような愛する妻を失った夫の苦しみ、優しい母を亡くした息子の怨念、そして、願わくば、セックスやキスシーンばかりをぶち込んでくるのではなく、医療過誤を真っ直ぐに受け入れられずにいる傲慢な主人公が改心してゆく姿を、もっと深く描いて欲しかったよ。

後半はギアとレインとのチュッチュチュッチュばかりで、私は率直なところウンザリしていたよ。

『最後の初恋』というタイトルを付けたにも関わらず、そこに医療過誤という責任重大なテーマを入れ込む愚を犯した監督の映画製作過誤をこそ、私は弾劾したい。

以上。
佐藤哲雄

佐藤哲雄