シネラー

ミザリーのシネラーのレビュー・感想・評価

ミザリー(1990年製作の映画)
4.0
スティーヴン・キング原作の
サイコ・スリラーである本作を初鑑賞。
名作故に内容は知っていたが、
それでも人間の異常な愛情と憎悪といった
怖さが感じられる作品だった。

雪道の事故に遭った人気小説
"ミザリー・シリーズ"の作者ポールが、
アニーという彼の熱狂的ファンに助けられ、
次第に彼女の狂気によって苦しんでいく
クローズド・サークル物となっているが、
何と言ってもアニーを演じた
シャシー・ベイツの豹変的な演技が
とても素晴らしく印象的だった。
手厚く介抱する愛らしさがあると思えば、
ヒステリックに暴力を振るう豹変ぶりは
とても人間味を帯びているだけに怖かった。
アニーとポールのやり取りにも
次第に会話の節々で彼女の地雷を
踏まないかという緊張感が強くなっていき、
ポールがアニーの留守中に家内を
散策する場面は冷や汗の出る場面だった。
そして、ポールがアニーと直接対峙する
格闘場面には爽快さもあったが、
後にも尾を引くエンディングがまた良かった。

気になった点としては、
地元警察がポールの車を発見するも
ポールが他者によって脱出した
と推察したのが保安官一人だけだったのは、
物語的都合とはいえ杜撰に思えた。
その保安官もアニーの家へ一人で
訪れた事で最悪の結果となるのは、
ホラー映画のよくある展開とはいえ
残念ではあった。

刃物を振りかざすシリアル・キラー
や幽霊よりも恐怖を覚える、
人間的な怖さをよく描いた映画だった。
今や何の媒体にしてもファンの声が
大きく響く現代社会だが、
アニーのように行き過ぎた
"世界一のファン"がいても
不思議じゃないと思うところだ。
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