tanayuki

メメントのtanayukiのネタバレレビュー・内容・結末

メメント(2000年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

時間をさかのぼるカラー映像と、時系列通りに流れるモノクロ映像が交差するつくりが「TENET」の挟み撃ち作戦を思わせる。「TENET」は本当に逆行させてしまったところがすごいのだけど、カラーパートの冒頭2分は「逆再生」になっていて、時間の魔術師ノーランの執念を感じる。

テディ「君はだれにでもサミーの話をしてる。『サミーを知ってるか』って。だんだん話ができる。自分を慰めるための作り話だ。みなやるさ。話ぐらい変わってもいい」
レニー「何の話をしてる」
テディ「さあな。カミさんの命は助かった。君の症状を疑い、苦痛と苦悩で身体もボロボロだった。インシュリンを」
レニー「それはサミーだ。話したろ」
テディ「何度も自分に話すようにな。忘れないように繰り返してた」
レニー「サミーは最後は療養所に行った」
テディ「サミーは詐欺師だった」
レニー「それは違う」
テディ「君はそれを暴いた」
レニー「おれが間違ってた。彼の女房が来て」
テディ「やつに女房はいない。糖尿病は君の女房だ」
レニー「ウソだ」
テディ「本当に?」
レニー「糖尿病じゃない。妻のことは知ってる。何を言ってる?」
テディ「本当のことを思い出させてやってる。ジミーのことも」
レニー「やつじゃない」
テディ「そうだった。復讐したんだ。喜べよ。どちらでも同じだろ」
レニー「まるで違う」
テディ「どうせ忘れる」
レニー「なぜかわかる」
テディ「忘れる」
レニー「今回は違う」
テディ「おれもそう思った。なのにやはり忘れた。ああ、本物のジョン・Gだ。1年前に見つけた。今はもう死んでる」
レニー「ウソをつくな」
テディ「レニー。おれは事件の刑事だった。君を信じ復讐を認めた。もう1人の男を見つけてやった。君の頭を殴ったやつを。そいつを見つけ君は殺した。だが君は忘れた。そこでまたすでに殺した男を捜し始めた」
レニー「そいつはだれだ」
テディ「ただのくだらないやつだ。意味もなくたまたま押し入った。家にカミさん1人だと思ったヤク中だ。やつを殺したことは忘れないと思った。だが違った。きっと今回も同じだ」
(レニーが自分の写った写真を見る)
テディ「おれが撮った、そのときに。うれしそうだろ。また喜ぶかと」
レニー「どうも」
テディ「おれが与えてやったことを君は喜んでやった。君は自分の真実をつくった。警察のファイルもだ。あの12ページを抜いたのはだれだ?」
レニー「君だろ」
テディ「違う、君だ」
レニー「なんで?」
テディ「わざと謎をつくるためだ。どこの街にどれだけジョン・Gが…おれがジョンだ」
レニー「テディだろ」
テディ「母はそう呼んだ。おれの本名はジョン・ギャメル。安心しろ。まだジョン・Gは山ほどいる。君は嘆いてるだけだ。おれがすべてやった。すべてだ。君はただ探偵ごっこをしてた。夢の世界でな。死んだ女房を生きる目的にして。果てしない夢の追求を」
レニー「殺してやる」
テディ「やめろ、レニー。君は人殺しじゃない。得意だがな」

レニー「人殺しじゃない。カタをつけたいだけだ。君の話は忘れるぞ。君がさせたことも忘れる。また謎解きを始めると? ジョン・G捜しを。君がジョン・G。おれのジョン・G。おれが物語をつくるって。君に関しては、そうしよう」

△2021/07/10 ネトフリ鑑賞。スコア4.8

特典のリバースシークエンスは時系列に沿った映像で流れが確認できる。これをこのまま映画にしなかったところに、ノーランの慧眼がある。最後の瞬間から時間を逆行して遡るカラーパートと、一蓮の出来事の最初から時系列に辿るモノクロパートが交互に映し出されることで、短期記憶が10分くらいでなくなってしまうレナードのおかれた心理状態を疑似的に追体験できるつくりになっている。モノクロがカラーに変わるとき、記憶を奪われたレナードの復讐劇が幕を開ける。テディの写真に「DON’T BELIEVE HIS LIES」と書くところは、「インセプション」で埋め込んだ小さなアイデアが大きく育っていくのに重なる。

ところで、テディが言うように、サミーは詐欺師で奥さんがいなかったのだとしたら、彼女は誰なのか。サミーはレナードと同じ健忘症ではなく、植物人間だと匂わせるような奥さんのセリフがあるが、あれはなんだったのか。まだわからないところが多い。

△2019/12/04 再鑑賞。スコア4.8
△2014/11/22 DVD登録。スコア4.6
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