エイデン

アパッチのエイデンのレビュー・感想・評価

アパッチ(1954年製作の映画)
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1886年アメリカ、アルバカーキ
白人に対し徹底抗戦を行なっていたインディアン“アパッチ族”の伝説的な戦士ジェロニモが、ついに米国騎兵隊に対し降伏する
ジェロニモが仲間と共に身柄を米軍に預けようとしたまさにその時、岩場に潜んでいた1人の若きアパッチの戦士が騎兵隊に向かって発砲する
彼はマサイといい、降伏の流れにも逆らい白人に一矢報いようと考えていた
しかし続く者もおらず不利な状況に立たされたマサイは、酋長の娘ナリンリに諭されている最中を狙われ、抵抗虚しく捕らえられてしまうのだった
騎兵隊のベック中佐は、マサイをジェロニモら共々 危険と判断し、アリゾナ居留地からフロリダ居留地に移送することを決める
列車に乗せられたマサイは、途中 給水のため停車した際に、ジェロニモ降伏の報を聞いた新聞社が写真を撮っている隙を突いて脱出することに成功する
故郷に向けて長い旅路を歩み始めたマサイは、オクラホマ準州の街に潜んでいたところを差別的な白人達に追われ、荒野に逃げ延びたところを同じインディアンの男性ウェドルに助けられる
ウェドルの家に招かれたマサイは、その暮らしぶりに驚愕する
既にアメリカに降伏しているウェドルら“チェロキー族”は、居留地にてまるで白人のような暮らしをしていたのだ
彼らは狩りはせず、農耕を白人に教わり平和な生活を過ごしていた
インディアンも畑を耕し農作物を収穫すれば白人と同等の暮らしができると説くウェドルに、マサイは抵抗感が隠せない
結局マサイはウェドルに背を向け、故郷に向けて歩を進めていくが、彼は大きな決断を迫られることになる



ロバート・アルドリッチ監督初の西部劇
実在したアパッチ族の戦士マサイの最後の戦いを描いた史劇の面もある

まだインディアンが西部劇の敵役として馴染み深かった時代に、インディアンを主人公とした作品
人種問題に配慮しがちな今と違って、当時は色々とアレだったので画期的とも言えるかもしれない

西部劇自体がインディアンのイメージを捻じ曲げて現在に伝えた要因でもあるんだけど、本作の主人公マサイは時代背景やら文化監修はどうか知らないけど、上手いこと高潔に描かれてる印象
故郷を奪う白人への恨みがありながらも、内心新たな時代に屈するしかないことを認めているようにも見える
その部族としての誇りと葛藤が丁寧に描かれているのは確か

古い西部劇ではありがちだけど、少し時代背景への理解が無いとわかりにくいところはあるかも
1776年にアメリカが独立したことは教科書で習うかもしれないけど、その実 独立とはよく言ったもので、元は北アメリカ大陸は俗に言うインディアンが先住していたところには注目してほしい
インディアンは最盛期には1億人もの人口がいたとも言われ、そこにやって来たイギリスをはじめとしたヨーロッパ諸国が植民地化
インディアンからしてみれば、突然やって来た白人達が自分達のテリトリーに家作るわ住み始めるわやりたい放題
そりゃ喧嘩にもなるわけで
どのツラ下げて独立とほざくのか
ただヨーロッパ人は銃やら大砲やら持ってて強かったので、無理やり土地は奪われ、代わりの場所として居留地へと望まぬ引っ越しまでさせられるという
ブリカスまじブリカス
白人への抵抗は徐々に沈静化したものの、その最終期まで激しい戦いをしたのがアパッチ族というわけで
更にその中で最後まで戦った有名人がジェロニモ
そこから更に更に最後まで戦ったラストソルジャーがマサイなのだ

雑で簡単な背景だけど、それを理解しているとマサイの複雑な気持ちが理解しやすいので、ぜひ調べてみてほしい

まあ時代的にも興行的にも有名俳優主演ということで、マサイ役はどう見てもゴツい白人顔なバート・ランカスターだけど、なかなか日の目を見なかったインディアンの強い決意がよく表れた良作なので、一味違った西部劇として楽しんでほしい
エイデン

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