継

スローターハウス5の継のレビュー・感想・評価

スローターハウス5(1972年製作の映画)
3.9
ビリーは, 自分の意識が過去や未来へと勝手に飛んでしまう, 特殊な能力の持ち主⏰。

自分の意思で戻りたい過去・見てみたい未来へ旅立つのではなく,
ただただ気まぐれに振り回されるだけだから堪らない😖。

姿はその時代の自分で, ある程度の年齢からはこの能力を理解するが
自分の力ではどうする事も出来ない。
何故そうなるのか・次にいつ/どの時代へ飛ぶかは説明されない。

意識は無遠慮に戦時中の捕虜時代や死の瞬間へさえ飛ぶ。
“過去の言動を変えると未来が変わる…” なんて都合の良いクリシェ、バタフライ・エフェクトには本作は見向きもしない。
人の一生は, 運命は, 予め決められ変える事は出来ない…。


’72年アメリカ製, この10年後に『ガープの世界』を撮るジョージ・ロイ・ヒル監督作品。
原作者がドレスデンでの捕虜時代に, 連合国軍の大爆撃を受けて九死に一生を得た実体験がモチーフになっています。

設定のタネ明かしと言うか, 「神」的な存在としてトラルファマドア星人が出てくる件(くだり)は違う映画になったような(^o^;, 思いもよらない展開なんだけれど,
時代が切り替わる描写の巧さなんかも功を奏してるのか, 全体に陳腐なカンジにはあんまり見えません。

歳を重ねるにつれ, 口数も感情の起伏も少なくなっていくビリーを, グレン・グールドの弾くバッハの劇伴がその僅かに垣間見せる感情の発露を波立たせるかのように響きます。
もちろん戦争批判はベースにあるんだけど, それよりも危うく味方に殺されそうになった不条理や, そうした経験から思うに到ったと思われる「諦念」が, 彼の姿に集約されているようでより強い印象を残しました。

「屠殺場」を意味するタイトルは, 実際に移送された捕虜収容所を指すと同時に, ある日突然に2万人を超す一般市民が無差別に大量虐殺されたドレスデンの惨状を表したもの。

ワンコの名演技も観られるU^ェ^U, 一筋縄ではいかない, 色々と考えさせられる映画でした🤔。
継