★ 終わらない悪夢、揺るがない現実
叫べ、悲嘆を超えた狂気を招くために
うわぁ…これは…いやぁ…。
もうね。言葉にできない想いとは「これか」と。うん。色々と評判は伺っていましたが、確かにオススメ出来ない映画ですね。行き着く先は煉獄。諸手を挙げて「はい、召し上がれ」なんて僕には言えません。
だからこそ、作品としては超一流。
監督さんの意図を見事なまでに具現化していますからね。どう足掻いても“この物語”を肯定する人はいないでしょう。“人間”の本質から目を逸らさずに描いた悪夢なのです。
とは言っても。
熾烈な描写に限って言えば“ぬるい”です。
自己本位的な欲望も、底知れぬ狂気も…オブラートに包んでいますし、ギリギリのところでB級映画に滑り落ちそうなくらいに滑稽です。
ゆえに本作は映画として成り立つのでしょう。
現実と虚構の狭間に存在するバランス感覚。
物語に埋没させず、されど冷静に捉えることも出来ず。その立ち位置が“物語序盤の選択肢”を浮き彫りにし、怒涛のように悔いが押し寄せてくるのです。
また、キリスト教圏の映画ですからね。
根底に流れる宗教色も刺激的なアクセント。
信仰の無様さと深遠なる闇を眼前にして途方に暮れますからね。そりゃあ、雲の切れ間から差し込む光に縋りたくなるというものです。
本作を仕上げたのはフランク・ダラボン監督。
公開当時は『ショーシャンクの空に』を手掛けた実績から、本作も感動大作だと勘違いした人も多かったのでしょう。…なかなか意地が悪い“罠”ですな。
まあ、そんなわけで。
霧が晴れることはあるのか。
それとも、全ては悪夢の中に留まるのか。
口に拡がるのは鉄分の味。
観るために必要なのは“覚悟”。
あなたは“覚悟”がありますか…?