たく

裏街のたくのレビュー・感想・評価

裏街(1941年製作の映画)
3.7
気高い高嶺の花だった女性が日陰の女になり果てるという運命の皮肉を描いてて、シャルル・ボワイエが相変わらずの色男っぷりを発揮してた。BGMが過剰なほどにメロドラマの雰囲気を高めるわりには甘いムードはなく、現実に翻弄される女性という哀しい内容になってた。

数々の男性から言い寄られるも全く相手にしなかったレイが実業家のウォルターに出会って瞬く間に恋に落ちるんだけど、二人が結婚のために待ち合わせた場所でレイが妨害にあって結果的にすっぽかっしゃう。この「愛し合った男女が待ち合わせで会えない」というシチュエーションは、同じボワイエ主演の「邂逅」(リメイク版は「めぐり逢い」)にも出てきたね。

昔からレイを好いていた自動車整備工のカートが出世して社長になり、改めてレイにプロポーズするというこの上ないチャンスをレイがものにしかけるものの、ウォルターに引き留められて結婚話を御破算にしちゃうというのが何とも歯がゆい展開。要するにレイは結婚のチャンスを二度も失ったわけで、あまりにもウォルターが身勝手過ぎる。そこからレイが長年ウォルターの愛人として日陰の存在になるわけだけど、彼女自身は後悔してない感じで、自分の皮肉な運命を受け入れて全うしたという感じに終わるのがしみじみ来た。この「男女の腐れ縁」にはどこか成瀬巳喜男の「浮雲」を思わせる。

監督のロバート・スティーヴンソンは「ジェーン・エア」「メリー・ポピンズ」を昔に観てた。マーガレット・サラヴァンをどこかで見たことがあると思ったら、遥か昔に観たルビッチの「桃色の店」に出てたんだね。
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