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ル・コルビュジエの家のbeachboss114のレビュー・感想・評価

ル・コルビュジエの家(2009年製作の映画)
5.0
「調和」をテーマに設計された邸宅を巡って繰り広げられる「不寛容」の物語。このご近所トラブルは、世界的建築家による設計の「開放性」が招いた皮肉とも言える。

見た目がイカつくてハタ迷惑だが実は気のいいお隣さんと、セレブでスノッブな主人公。了見の狭い人間にとって、オープンマインドな隣人はホラー。壁の向こうの闇から顔を出してきたスキンヘッドの中年は、地中から突然現れた怪物が如し。

この監督コンビの作品を最新作から遡って見てみたが(『コンペティション』➡️『笑う故郷』)、初期作品ということで冗長さは拭えないものの、特権階級の鼻持ちならない自意識や欺瞞や独善に対する冷めたスタンスは一貫しているし、建築から調度品に至るまで、デザインに対する造詣の深さも見どころ。同時に、素人のイタい芸術に対する憐れみの視点や諦観も笑いどころ。

隣人が作った窓枠が劇中で新たなフレームとなる辺りも映画的手法として面白く、そこで展開されるアートな指人形劇場も不思議な魅力を放っている。

それにしてもこの隣人、エンドロールでわざわざレシピを教えてくれるぐらいの人の好さ。天国から?
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