乙郎さん

ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオの乙郎さんのレビュー・感想・評価

2.5
 ホラー映画をメタ的に観るという試みは『キャビン』があったけれども、『ファイナル・ガールズ』はさらにその先に進んでいる。
 つまりは、ホラー視聴者の罪を暴く『キャビン』に対し、『ファイナル・ガールズ』はその先に進む。例えば回想シーンに入るさいに、テロップがまるで『キルラキル』のような岩状の物質になり、カメラが横に回って立体に見える。実はこれこそがこの映画の宣言、つまりは、平面に見えるホラー映画であってもその中では立体のドラマが展開されているのだという証明ではないか。場合によっては物語の都合で設定されたようなアッパッパーなキャラにさえも華を持たせる。劇中二回出てくる胸をはだける場面の感動といったらどうしたことだろうか。
 惜しむらくは、そういった主張の強さが先に出過ぎて少し理屈っぽく思えてきてしまうところなのね。虚構と現実が、母と娘がスクリーンの裂け目において重なり合うような瞬間をもっとたくさん提供できたら、と思わざるを得ない。
『キャビン』にせよ『ファイナル・ガールズ』にせよ、ビターな感触が残るのはホラー鑑賞者の自罰的な感情だろうか。しかしながら、確実にホラー愛、いや、ホラー映画内のキャラクター愛を感じる一作だった。
乙郎さん

乙郎さん