みかぽん

荒野の誓いのみかぽんのレビュー・感想・評価

荒野の誓い(2017年製作の映画)
4.0
先住民と入植者(白人)の戦いがほぼ終わりを迎えていた1892年、引退目前のブロッカー大尉は上官から、宿敵、シャイアン族首長とその家族のモンタナ移送を大統領令で任命されてしまう。
ガン末期の首長を故郷へ戻す恩赦らしいが、印象操作のための政治利用臭はぷんぷん。しかも大尉は今までの戦いで部下や戦友を山のように失っているので、首長に対し怒り心頭。一度はそれを爆発させて断るが、であれば懲罰人事(=年金没収)とゴリ押しされて、渋々これを引き受けることに。
しかし、今や静かに帰還出来る日だけを待ちわびるシャイアン族一家の言い分を私が代弁させて貰えるのなら、そもそも土地の所有と言う概念がない彼等先住民の住まいを開拓者の理屈で「所有」し始め、土地から追い払うような真似をされればこれを阻止すべく戦うのは当然のことだが、その結果、部族は殲滅させられて敗北は受け留める他なくなり、こうして故郷モンタナから遥か遠いニューメキシコまで連行されて、7年間も拘留されていた首長とその家族達なのだ。

この物語が始まって直ぐ、戦いとは無縁の開拓者一家惨殺(母親を除いて)は確かに凄惨であり、嫌悪と共に刻まれた。しかし単純に良い悪いの後者側のインディアンとして分けるのはちょっと短絡で、彼らコマンチ族も侵略者に絶滅させられ、残された数名がゲリラ化し、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いな復讐の徒となって、もしかしたらあの殺戮も報復の連鎖であったのかも知れない。(などと言いつつも、家族をコマンチに惨殺された女性を前に、したり顔で〝先住民にも愛を〟的な話題を撒いて悦に入る白人おばさんのデリカシーの無さにも怒りを感じてしまうのだが。うぅ〜、、)。

もとい、かくして首長家族を帰還させる旅は始まり、遥か1000マイルの行程の途中では一致団結マストでお互いの命を繋いだり、救出し合ったりの展開も訪れてで、そのうちお互いが共に戦う仲間的意識も芽生え始める。
当初は怒りに溢れていた大尉の心だが、その変容を静かにクライマックスへと運ぶクリスチャン・ペールの圧倒的演技はただもう凄いの一言。

相手を真の意味で理解し、敬意を持って接すること。二元論、または勝者の理論で語られている今の時代にこそ、世界共通の課題として地球人全員が両目を開け、姿勢を正して観るべき課題図書的映画(??)かも。


みかぽん

みかぽん