竜平

SHAME シェイムの竜平のレビュー・感想・評価

SHAME シェイム(2011年製作の映画)
4.1
セックス依存症で卑猥な思考に取り憑かれたような日々を送る男のもとに、ある日恋愛に失敗し住む場所を失ってしまったという妹が転がり込んでくる、というところから始まる話。

監督が『それでも夜は明ける』のスティーヴ・マックィーン。主人公はニューヨークにて暮らすエリートサラリーマンでありセックスや自慰行為の依存症、まぁ病的なものでなく理性はあるように見えるけども果たして、という感じ。演じるのがマイケル・ファスベンダー。そこへ現れるのが歌手でわりと自由奔放、恐らく恋愛下手で、どこかメンヘラ気質も見える妹。演じるのがキャリー・マリガン。愛に対してとくに迷いも疑いもなく生きてきたらしい主人公の人生が、哀れな妹との再会によって少しずつ揺らぎ始めていく。今回アマプラで見たのが劇場公開版なるR18のバージョンで、それでなのか露出シーンにはモザイクもないし、まずそんな演者の体当たり具合に驚く。ファスベンダーの股間とかがっつり写ってるし、濡れ場もかなり本息だし、ね。コールガール、行きずりの女性、職場の同僚など、様々な交流や会話の中でじつは見えてくるのが恋愛や将来に対してのそれぞれの価値観、男女間の微妙な空気感というもの。ヒューマンドラマ好きとしてはここらへんで心をギュッと摘まれる感じ。でとにかく卑猥で過激、なんだけど、性の観点から人と人との繋がりとか人生とか、更に人それぞれある「愛」の存在、その意味みたいなものまで追求していく内容になってるのが見事。主人公がどのようになっていくのか、行き着く先には何が待ち受けているのか、見届けたくなっていくはず。にしてもマイケル・ファスベンダー、初めて見る出演作が今作じゃなくてよかったなと個人的に思ったり。今作を最初に見てたら他のどの作品で彼を見かけても性欲モンスターに見えてただろうなと、もうね、そのくらいの熱演。これは『アメリカン・サイコ』の時のクリスチャン・ベイルとか『ハウス・ジャック・ビルト』の時のマット・ディロンとかと同じ、イメージがこびりつくほどの役へのハマリよう、すげー。

にっちもさっちもいかなくなって、やがてハチャメチャなことになっていく終盤。AVよろしくな過激シーンとは裏腹に主人公が悲哀と虚しさでいっぱいになる、その姿が非常に印象的。完全にこちらの想像に任せるラストまで、見入ってしまったというところ。想像に任せると言いつつも、どうなったかのその意見はわりとみんな一致するんじゃないかな。エロ強めのヒューマンドラマって普段そこまでハマらないんだけど今作には魅了された。力作。
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