イチロヲ

血のバケツのイチロヲのレビュー・感想・評価

血のバケツ(1959年製作の映画)
4.0
ビート文化の影響下にいる内向的な青年が、猫の死骸を粘土で固めることにより、前衛的な彫刻を作り上げる。ビートニクの有象無象に巻き込まれた青年のジタバタ模様を描いている、ホラー・コメディ。

既成概念にとらわれない自由な発想を尊重する運動、"ビート・ジェネレーション"をオンタイムで反映させている作品。カフェに集うビートニクの若者たちに感化された主人公が、「自尊心の昂ぶりと猟奇性の喚起」という負の連鎖を繰り広げていく。

うっかり殺してしまった猫を彫刻に変えると、周囲のビートニクが芸術家特有のレトリックで高評価して、担ぎ上げてくる。慕っている女性からも褒められて、ウキウキ気分になった主人公は、高精度の彫刻を創作するべく、猟奇殺人に手を染めてしまう。

良かれと思って始めたことが、反道徳的行為に転じてしまう、ロジャー・コーマン初期作品の王道的展開。好きな女性にアピールしたい気持ちが全面に溢れており、倒錯ドラマの真骨頂を味わうことができる。
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