マヒロ

ブラディ・サンデーのマヒロのレビュー・感想・評価

ブラディ・サンデー(2002年製作の映画)
3.5
1972年の北アイルランドにて、公民権運動の一環として始まったデモ行進の列に、警備にあたっていたイギリス軍が無差別に発砲し多数の死傷者を出した『血の日曜日』事件を題材にした作品。

非常にドライなタッチで描かれていて、デモの主催者である政治家のクーパー、そこで暮らす若者達を始めとした市民達、そしてイギリス軍それぞれの目線から、事件当日の出来事をまるでその場にいるかのように淡々と映しだしていく。
劇伴もない生々しい映像の中で、唐突に銃撃が始まる恐ろしさもあるし、イギリス軍による隠蔽というその顛末も含め、何故そんなことが起きたのか?という真意が最後まで掴みきれないのがとにかく不気味。

後にハリウッドに呼ばれるポール・グリーングラス監督の手腕は既に冴え渡っていて、残酷な事件変に盛り立てることなく、しかし異様な緊迫感をもって描いている。
ただ、個人的にちょっと気になったのが、細かいシーンの転換時にいちいち暗転が挟まるところで、特に状況があちこち動く序盤なんかは、ほば同じ時間軸のちょっと違う視点に映るだけでも毎回画面が暗くなるのがテンポを阻害してしまっているように感じられてしまった。

今作の製作以降、イギリスから正式に謝罪があるなど状況の変化はあったみたいだが、それでも忘れてはいけない歴史上の汚点とも言える衝撃の事件を追体験させられるような、意義深い作品だと思った。

(2023.55)
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