YasujiOshiba

妖怪巨大女のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

妖怪巨大女(1958年製作の映画)
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FB(Salem Horror Fest)のページで閲覧。24-36(24-35 は『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』)。

アリソン・ヘイズの名前を覚えておこう。「ハリー」と叫びながら暴れ回る50フィート(15.24m)巨大妖女なのだけれど、もともとは美しい金持ちの娘ナンシー。ダイヤを集める宇宙人に、胸のダイヤのネックレスを狙われ、宇宙船からの放射線の影響で巨大化してしまうと、金のために近寄ってきて夫となった浮気者のハリー(ウィリアム・ハドソン)と、その浮気相手のハニー(イヴェット・ヴィッカーズ)を襲う。

そんな美しい妖女の悲しさ。だってハリーを愛しているから、少しでも優しくされるとそれだけで幸せで、自分だけの男になってほしい。でも、この浮気男は、尻軽美女のハニーに言う。「おれたちはふたり同じ病気にかかっているのさ。マネーって名前の病気にね」(We've gotta have the same desease: money.)。

マネーの時代は科学万能の時代でもある。その合言葉は「音速の時代」(supersonic age)。なにしろ、あの『ライトスタッフ』(1983)で描かれたチャック・イェーガーが1947年10月14日に人類初の有人超音速飛行を成功させている。「原子力時代」や「宇宙時代」はそのあとに続くのだけれど、科学が万能であると言われるほどに、科学では説明できない闇が広がってくる。それが宇宙から飛来する生命体。

この生命体がなんとも古風なところが面白い。まるで中世の十字軍の兵士。おそろしいのは丸坊主なところ。特撮も2重露光のオールドテクニックなのだけれど、それがなんとも良い味を出している。まさに「音速の時代」の間隙を突くものが、そんな古めかしさとエロスと嫉妬と復讐だというわけなのだろう。

ぼくがこの映画で思い出すのは、あのフェリーニによって巨大化させられたアニタ・エクバーグ(「アントニオ博士の誘惑」『ボッカチオ'70』[1962])。きっとフェリーニもこの映画見たんだろうな。観てなくても同じような闇を見つめていたのだろうと思う。

ぼくが観たFBのリンクはここ:
https://www.facebook.com/watch/?v=832192980606923

ダリル・ハンナのリメーク『愛しのジャイアント・ウーマン Attack of the 50 Ft. Woman』(1993)も面白そう。
https://www.youtube.com/watch?v=kBMg1JZ3hW4

そうそう、かのティム・バートンもこの映画のリメークをしようとしているみたいだけど、モニカ・ベルッチが巨大化するのかしら。楽しみだわ。
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