久しぶりにアキ・カウリスマキを見たら相変わらず楽しかったけど引くほど映画オタクでフォームでしか映画撮ってなくてこんなんだったっけ…とけっこう困惑してしまった。
劇中出てくる名前がマルセル(・カルネ)、(ジャック・)ベッケル、アンリ(・ヴェルヌイユ)、ジャン=ピエール(・メルヴィル)、(ルネ・)クレールなうえ、ゲスト枠にジャン=ピエール・レオとピエール・エテックスまで呼んでいて、古き良きフランス映画へのオマージュが全編にわたり繰り広げられる。それでいて全体の雰囲気はフレンチノワールっぽい。っていうかメルヴィル作品のような移動が時間の多くを占める映画だった。
地名もノルマンディーとかダンケルクとか世界大戦の重要地を出しつつ行われるのは難民を匿ってロンドンに送り届けるという作戦で、なんだかレジスタンスものを思わせる。現代に話を置き換えて難民ものにしたわけだが、結局は置き換え可能な要素でしかなくオマージュすることに重きが置かれているように感じた。さらに病身の妻の話は一体なんだったのだろうと思うくらいわりとぞんざいな気がして、そこも乗り切れなかった。
MVPはライカ。あとリトルボブもかっけぇ。
普通に映画の作りとして、リズムが良く固定アングルのカメラも安定して綺麗で細部への意識が高く非常に形式として超一級である。それゆえにさらに求めてしまうという私の欲深さでもある。