あんじょーら

田舎司祭の日記のあんじょーらのレビュー・感想・評価

田舎司祭の日記(1950年製作の映画)
3.7
ロベール・ブレッソン監督     U-NEXT


初ロベール・ブレッソン監督作品です、なかなか見られにくい作品ですが、流石U-NEXTさん、ありがたいです。


つい少し前に、ポール・シュレイダー監督作品「カード・カウンター」が面白すぎて、少しp監督について調べた際に出てきた、「厳しいプロテスタントカルヴァン派家庭で育ち、映画は娯楽とされ、かなり大きくなるまで見られなかった。その後映画を観て、小津安二郎、カール・テオドア・ドライヤー、ロベール・ブレッソンの映画に傾倒、批評集を出版」という事実を知って、ちょうどロベール・ブレッソン作品観てなかったけど何処かで見れないかな?と思って検索して出てきたのが、U-NEXTさんで観られるこの作品だったので。


あ、ポール・シュレイダーのお兄さんが、あの、レナード・シュレイダー!というのも最近知った驚愕の事実!!そうか、そういう事か!というのが知的興奮の大きな要素ですよね?それぞれ勝手に、調べて、それがある事で繋がった瞬間の理解の深度、凄く興奮します。


オートバイや車は存在するが馬車も使用されている時代の北フランスのアンブリクール。若い司祭が教区として新任され、彼は肺の病気を隠しつつ、司祭の役割を全うしようとするのですが・・・というのが冒頭です。


今から見ると、凄く抒情的、短いカットの連続です。しかし、それなのに、静謐と呼びたくなるくらいの美しさとスタイルを感じさせてくれます。


そして、恐らく、まだ神が存在した世界。それもビクトル・ユーゴ―の小説「レ・ミゼラブル」の世界かのような、その場に居る人間がすべからず、神を信仰している世界であれば、神は存在するに等しい感覚の、街の話しです。


登場人物は多くなくて、若い司祭、その司祭を導く先輩の司祭、領主、領主の妻、娘、その娘の家庭教師、医者、くらいです。


ですが、かなり練られた脚本で、とても詩的。この詩的な感覚が理解出来れば、好きな作品になると思いますし、画面の上だけで想像が及ばないと、理解しにくい作品になってしまうかもしれません。


ある意味世界を魅せる作品でもあるし、若い司祭の苦悩、それも西洋小説でよく描かれる神と悪魔の戦いの小規模な街を世界とした感覚、と言う意味の世界を映し出してくれます。


最終的に至る部分にも、リリシズムを感じますし、なんというか、とても好みが分かれる作品。


主演の若い司祭の顔、美しいですし、その司祭を困らせる女の子も、また美しい。領主と司祭、男性と女性、聖なるものと俗なるもの、お互いの不理解、心の機微を、またわざわざ日記に記す、その神とペンのこすれる音的なフェティッシュも感じさせてくれます(あ、あと靴音もかなり好み)。


もう少しこの監督作品みたいのですが、なかなか無いですね・・・残念。


世界の切り取り方を観てみたい人に、オススメ致します。