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ドアをノックするのは誰?のカカポのレビュー・感想・評価

ドアをノックするのは誰?(1968年製作の映画)
3.8
【注】性暴力描写(集団暴行未遂含む)がありますので苦手な人気をつけて!

スコセッシ監督1作目にして、あまりのキショ男解像度の高さに度肝を抜かれた。本当にこれ70年前に撮られたやつですか???
物語はほとんどないに等しく、登場人物たちが織りなす会話や日常、中でも特に若い男たちの振る舞いにスポットが当たっていく。醜悪かつ幼稚なホモソな内輪ノリや、女性に接する時の謎の上から目線、さらには衝動的な性欲と加害が紙一重のところにある残虐さ。そうした有害男性性が、淡々とレンズに収められていくので見ていると、どのシーンも正直とても胸糞が悪い。
しかし、それでも見ていられるのは今作を撮ったスコセッシにそれらを擁護しようという意志が一切なく、ただただ憎しみと呆れを持って描いているのがわかるからだ。

特に、性暴力のシーンはエロスのかけらもなく、ひたすら残虐に恐ろしい犯罪として描かれる。なぜならそれは犯罪だから、とでも言わんばかりに(とはいえちょっとシーン自体が長すぎてアレはアレで性暴力を一種の"見せ場"のようにしてるのはいただけなかったが)

さらに、その性暴力を受けた女性が、そのことをついに恋人に打ち明けるシーンから続くなんとも惨たらしい会話と、最後のラストシーンで男が放つ耳を疑うような一言からの応酬も衝撃的だった。
「性暴力の被害」に関してあまりに無知で愚かな人間が発する言葉としてあまりにリアリティがあり、さらにそれに対する女性側の対応もあまりにリアルだったので……1960年代に男性作家がこれを……これを……スゴい……

ということでスコセッシって最初から凄かったんだなと思いました。まあ、70年前の作品で描かれるようなマチズモ仕草を2023年現在同じレベルで共感できるヘルジャパンのヤバさが際立つってのもありますがね。さすが125位!

※キショ解像度が高かったところ
●最初のフェリーで聞いてもねえのに次々蘊蓄を披露してくるところ
・特に相手がすでに知ってることを嬉々として披露してくるのマジでキモかった(普通に「それ知ってる」って言われて、ちょっとムッとしてるのもキモかった)
・相手が自分より格下前提で話してるのが透けて見えて「ダッッッル」と思った
・てか、そもそも全然会話として成り立ってなかったよね。男ばっか喋るからだんだん女性側が気持ちよく喋れるように接待してあげてるみたいな感じになってるの、マジ脚本がうまい。あるあるなので

●ボーイズクラブの中で一番下っ端を決め、ダサいあだ名をつけて執拗にからかうところ
・愚かすぎ

●性暴力について打ち明けられた時のあの態度
・「相手の男と同じように言うと思うか?」→加害者なんだから言うわけなくない?
・「のこのこドライブに行ったお前が悪い」→レイプした方が悪いに決まってんだろ死ね

●ラストシーン
・「許してあげる」→????????
・早朝に訪ねてきておいて「早朝に男を家にあげるな」→お前に謝るチャンスを作ってやったんだが??????
・プロポーズ断られた瞬間急に逆ギレして娼婦呼ばわり→あるある解像度が高すぎる

スコセッシ脚本のこの異常な解像度の高さ、マジでスゴイ。相手への共感力が高すぎるのか観察力がずば抜けてるのか、はたまた2020年代からタイムリープしてるのか!?!?!?
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