このレビューはネタバレを含みます
原作小説と話は違うけど、これはこれで面白い。
原作の、死から逃れるかのように宴に没頭する人々の描写、この文学性の高さは流石エドガー・アラン・ポーだと思う。
対して映画は『死』に理由付けをしている点で、(面白い映画だとは思うものの)作為性を感じてしまいます。
映画では無垢な人間とその恋人は赤死病を免れる。でも、現実の病は誰にでも平等で、感染病は良い人も悪い人も老人も子供も殺す。
小説で訴えるリアリズムが映画では薄れてしまっています。
けれど、映画で変えられてしまった他の部分、特に城主プロスペローの人物は映画の方が魅力的でした。
理知的なのに悪魔崇拝の狂信者、冷酷でありながら無垢な者には同情心を見せるという、この2面性が観る人にプロスペローの真の人間性を想像させるのだと思います。
普通であれば嫌悪を抱くような人物でありながら、死んでしまうのが惜しい。
また、城の中で死んでいく人間たちは、皆つまらない感情によって自らを殺すことになる。
それはそれで人間らしさのリアリズムがあると思えます。