映画を見る猫

パンと裏通りの映画を見る猫のレビュー・感想・評価

パンと裏通り(1970年製作の映画)
5.0
キアロスタミ再見備忘録①
処女作、一番最初に見たキアロスタミ作品として思い出深い一本。
子供が主役、かと思いきや実は最後のショットで視点が代わりワンコ映画であることに気づかされるだろう。
一見ドキュメンタリー風だが、主観ショットの作り方が非常に巧妙で、かなり編集で作られた映像だとわかる。このような擬似ドキュメンタリー風な作風は、後の作品のスタイルを暗示しているようでもある。この頃から主題は、子供とイラン。まだまだ母国を離れていない。
ワンコとの出会いのシーン。画面外の音(鳴き声)によって、暗示的に視覚外の世界を拡張させるキアロスタミの手法はこの頃から健在。
つまり一本の短編としてもほのぼのでき、キアロスタミの作風の萌芽を読み取ることができるという意味でも大好きな作品だ。