今でこそこういうディストピアものは定番ジャンルとなり別段珍しくなくなったけれど、それでも低予算でほとんど有りものという状況のなか大金を使いCGを駆使して製作された現在のSF映画と何ら遜色の無い出来に仕上がっているところに監督を担当したジョージ・ルーカスの類稀なセンスを感じさせる。いや低予算なればこそ監督の才覚が光輝いていると言えるのかも。
カット割といい人の話しているときの撮影の仕方といい何処と無くゴダールっぽいなと思っていたら、インタビューでやはり意識していたことが判明。SF作品は『アルファヴィル』ぐらいしか手掛けなかったゴダールが、ルーカスや庵野秀明など後進の作家に影響を与え『スター・ウォーズ』や『エヴァンゲリオン』の製作に一役買っているという構図が興味深い、ゴダール自身はそんなこと気にもかけてないと思うけど。
管理された社会で暮らす未来の主人公のストーリーは新味はなく段々と飽きてくるのが難点、それでも監督の見せ方が上手いのでそれなりに楽しく鑑賞できる。
後半のミュータントにはこういうSFには見慣れているはずの私でもちょっとびっくりした。
こういう管理ものでちゃんと性欲に触れているところに感心、性行為も管理されているので映像を見ながら処理せざるをえない男性たちはさながらAVなどアダルトコンテンツを見て性欲を処理する現代人を見ているようでハッとさせられる(ただ映像や本が無かった時代の人間が頭をフル回転させて自分でやっていたことを考えると楽だけど)。
『マッシュ』や『組織』とは違った、繊細で勇気ある主人公を演じるロバート・デュヴァルの名演も見所。